改訂新版 世界大百科事典 「ハナアブ」の意味・わかりやすい解説
ハナアブ (花虻)
双翅目ショクガバエ(ハナアブ)科に属する昆虫の総称,またはそのうちの1種を指す。この類の成虫がよく花を訪れることと形態がハエ類よりもむしろアブに似ていることから由来した名である。このほか,花に集まるハエ,アブの類を漠然と指す場合もある。ショクガバエ科Syrphidaeの昆虫は日本からは約300種知られている。成虫は比較的大きく,頭部は半球状,雄の複眼は相接している種が多い。胸部は緑色,黒色などで光沢を有するか微毛で覆われているが,剛毛はほとんど生じない。腹部は一般に黄色の斑紋または黒帯を有する。幼虫の形態と食性は多様で,水中生活をし,水中の有機物を食べるもの,アブラムシやカイガラムシを捕食するもの,ハチ,アリ,シロアリなどの巣に寄生し,ハチの集めた花粉などを食べるものなどがある。
ハナアブEristalis tenaxは,もっともふつうな種で,成虫は3~12月ころまで出現し,花壇などの花上でよく見かける。幼虫は水生で,長い呼吸管をもち,これを水面に出して呼吸するのでオナガウジと呼ばれる。下水溝など汚水中で水中の有機物を食べて生活する。
執筆者:篠永 哲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報