バプティスト(英語表記)Baptist

翻訳|Baptist

改訂新版 世界大百科事典 「バプティスト」の意味・わかりやすい解説

バプティスト
Baptist

プロテスタント最大の教派の一つ。幼児洗礼を認めず,自覚的な信仰告白にもとづき,全身を水にひたす浸礼によるバプティズムbaptism(洗礼)を主張するところからこの名称があり,浸礼派ともいう。教会政治は各個教会の独立自治にもとづき,政教分離を主張するのが特色。17世紀の初め英国国教会に迫害されてアムステルダムに逃れたJ.スミスによって創立され,アメリカにはピューリタンの一人R.ウィリアムズによって最初の教会がロード・アイランドに設立された(1639)。17世紀にはフロンティア西漸につれて中西部南部への伝道に力を注ぎ,現在はアメリカ最大の教派となっている。教会員数は2700万人(1975)と推定されるが,その大多数はいわゆる南部バプティストSouthern Baptist Conventionに所属し,神学的にも政治的にも保守的で,なかにはファンダメンタリストや政治的右翼が少なからずいる。また南部に多い黒人教会の3分の2はバプティストであり,公民権運動指導者のM.L.キング牧師の出身教会である。南北戦争以前に奴隷制度に反対して分離したいわゆる北部バプティストAmerican Baptist Conventionは約160万人と少数ではあるが,そのリベラルな神学的・政治的影響力は無視できない。20世紀初頭の社会的福音の神学者ラウシェンブッシュもその一人である。20世紀最大の大衆伝道者ビリー・グレアムも南部バプティストである。

 南部バプティストは日本では日本バプティスト連盟と呼ばれ,1890年以来主として西日本で伝道,西南学院を経営している。一方,北部バプティストは日本バプティスト同盟と呼ばれ,1873年から関東で伝道,関東学院はこの教派の学校である。各個教会主義をとっているために,このほかにも,第2次大戦後来日したアメリカの宣教師によって始められたバプティストを名のる小教派が多数ある。バプティスト教会は海外伝道に熱心で,ミャンマーや旧ソ連国内でもさかんである。
再洗礼派
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百科事典マイペディア 「バプティスト」の意味・わかりやすい解説

バプティスト

〈浸礼派〉とも。プロテスタント最大の教派。幼児洗礼を認めず自覚的な信仰告白に基づき,全身を水に浸す洗礼(浸礼)を主張するので,この名がある。外的な形式や制度より霊的な信仰の自由を重視し,教会の独立自治を唱える。17世紀初頭,英国国教会の圧迫をのがれオランダに渡ったJ.スミスが創立,米国ではR.ウィリアムズが1639年に教会を建ててから大きな勢力となった。南北の両派があり,M.L.キングやB.グレアムは南部,ラウシェンブッシュは北部バプティスト。日本でも1873年(北部),1890年(南部)以来,伝道活動を行っている。→再洗礼派

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旺文社世界史事典 三訂版 「バプティスト」の解説

バプティスト
Baptist

カルヴァン主義の流れをくむプロテスタントの一派。「浸礼 (しんれい) 派」ともいう
幼児洗礼を否定し,『聖書』中心の内面的信仰を重んじる。名誉革命以前のイギリスでは迫害され,新大陸に移住したものも多く,現在アメリカ最大の教派となっている。公民権運動の指導者キングもこの教派の牧師。

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世界大百科事典(旧版)内のバプティストの言及

【散文】より

…フローベール以後の散文は,こうして人間と事物の具体性から離れた,表現の過剰に悩んでいるといってよい。小説【針生 一郎】
[散文理論の展開]
 散文の理論的な究明は,シクロフスキーなどのロシア・フォルマリズムの文学研究に端を発したが,M.M.バフチンによって独自の展開を遂げた。バフチンは,フォルマリズムの散文研究が,詩的言語論を前提としその適用によって散文を位置づけようとするのに反対し,散文と詩における言語機能の基本的な違いに着目する。…

【詩学】より

…そのほか,S.エイゼンシテインはモンタージュ論により映画の詩学の道を切り開き,V.Ya.プロップは魔法昔話の一般構造式を定式化している。 M.M.バフチンはフォルマリズムのように異化の手法を絶対視せず,共創造・再創造の理論を提起した。彼は作品を形式的構造に還元せずに作者・主人公・読者の参加のもとに成立すると考えた。…

【ドストエフスキー】より

… しかし,長く続いたこのドストエフスキー観も,1970年ころから変化を見せ,ドストエフスキー文学がさまざまな新しい知的方法論の実験材料として利用される動きが出てきている。バフチンの《ドストエフスキーの創作の諸問題》(1929。邦訳1968)がこの動きを先導している。…

【翻訳】より

…一般に文学の新しい言葉も,そうしたなかから生み出されるのである。すでにアリストテレスの《詩学》も異国の珍しい言葉の喚起力に注目しているし,ソビエトの文芸学者M.M.バフチンは言語と言語の接触・混交から新しい言語が生み出されることを自己の言語論の原理としている。異質の文化を担った異質の言語と言語が出会う場合,100%の翻訳可能性,〈正解〉は絶望的となるが,実はそうした場合の翻訳不可能性とそれから生じる一種の〈曲解〉こそ翻訳を受容する言語と文化に新しい創造性をもたらすということができる。…

【ロボティクス】より

…従来,ロボットの設計・製作・制御に重点がおかれていたため,ロボット工学を指す場合が多いが,近年,産業面以外の応用の議論が盛んになされ,ロボットに関連したさまざまな科学研究を総じて〈ロボティクス(ロボット学)〉と呼ぶ傾向が強くなってきている。現在,工場などで利用されている産業用ロボットは,一般大衆がイメージするロボットから程遠く,後者は主に大学や研究所などで〈自律ロボット〉として研究対象となっている。…

※「バプティスト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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