日本大百科全書(ニッポニカ) 「パーセプトロン」の意味・わかりやすい解説
パーセプトロン
ぱーせぷとろん
perceptron
視覚と脳神経の機能をモデル化したもので、パターン認識の学習に用いる。現在ではニューラルネットワークとよばれているものの元祖。複数の入力信号に重みを掛けて足し合わせ、それに応じて出力するというシンプルなネットワークで、望ましい出力が得られるように重みを変更することによる学習能力をもつ。1960年代に第一次のニューラルネットワークブームを巻き起こしたが、1969年に人工知能(AI)学者マービン・ミンスキーMarvin Minsky(1927―2016)らによって特徴空間(たとえば身長や体重といった特徴量を軸とする多次元の空間)で線形分離可能なもの(特徴空間を平面で分割できるもの)しか学習できないことが理論的に証明されたことによって下火となった。しかし、1980年代に中間層を導入した多層パーセプトロンが実現することにより、この学習限界が取り除かれ、理論的にはすべての概念が学習可能となった。この時期にさまざまなネットワーク構造も考案され、自然言語理解の可能性も示唆されるなど第二次のブームとなった。2012年以降、この中間層が超多層化したネットワークでディープラーニング(深層学習)が花開き、第三次ブームとなっている。とくに2016年のアルファ碁(AlphaGo)によるトッププロ棋士に対する勝利は、コンピュータ囲碁の研究者をも驚かせた。
[中島秀之 2019年9月17日]