ヒラタヤスデ

改訂新版 世界大百科事典 「ヒラタヤスデ」の意味・わかりやすい解説

ヒラタヤスデ

倍脚綱(ヤスデ綱)ヒラタヤスデ目ヒラタヤスデ科Platydesmidaeに属する節足動物の総称。体長5~30mm。頭は小さく,円錐状で触角は短い。胴節は成体では約40個以上あり,その背板は扁平で微小な瘤起(りゆうき)が2~3列ある。春に産卵し,数十個の卵をまとめて雄が抱卵する。孵化(ふか)したばかりの1齢幼虫は4対の歩肢をもつ点で,他のすべてのヤスデ(3対)と異なる。脱皮ごとに胴節,歩肢の数が増え(増節変態),約5,6回の脱皮のあと成熟する。森林下層の落葉層や,朽木の樹皮下に生息し,行動はヤスデの中でもっとも鈍い。日本産にはヒラタヤスデ,ヤマシナヒラタヤスデとアカヒラタヤスデなど5種があり,北海道を除く全国に分布している。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒラタヤスデ」の意味・わかりやすい解説

ヒラタヤスデ
ひらたやすで / 扁馬陸

節足動物門倍脚(ばいきゃく)綱ヒラタヤスデ科Platydesmidaeの陸生動物の総称。扁平(へんぺい)な紐(ひも)状のヤスデで、体長10~30ミリ。頭は円錐(えんすい)形で小さく、胴は多数の胴節からなり、背板には多数の微細な顆粒(かりゅう)状突起がある。色は白色、淡紅色または朱色で美しい。森林の落ち葉や蘚苔(せんたい)類の中、樹皮下などにすみ、腐植菌類を食べ、群生することが多い。行動は鈍い。日本産は約10種類が知られている。この仲間は一般に雌が抱卵する習性をもっているが、そのなかでヒラタヤスデは雄が抱卵するという珍奇な習性をもつ。

篠原圭三郎]

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