室内などの光量の少ない所ではほとんど無色透明で透過率が高く,屋外では光に感応して着色し,吸収率が高くなるような可変透過率ガラスをいう。現在のところハロゲン化銀の微粒子を含むものが,サングラス用レンズとして実用化されている。
製法としては,原料に感光性のハロゲン化銀を加え,ガラス中にAg⁺,Cl⁻などのイオンの形で溶かしておいて,次に,やや低い温度で再熱処理をすることによって10mm程度のAgCl微結晶を析出させ,コロイド粒子として分散させる方法で作られる。このAgCl微結晶中では光(とくに短波長の光)によって,次の反応が起こる。
すなわち,光の照射によってハロゲン化銀微結晶中に銀コロイドができ,光を吸収するために着色し,暗所に置けば,逆反応が起きて再び透明なハロゲン化銀微粒子になり,ガラスも透明になる。
フォトクロミックガラスの組成の例を表に示す。左にあげた各成分のうち,上部にあるSiO2からZrO2まではマトリックスとなるガラス組成で,組成2のように,PbO,BaO,ZrO2が加えられているのは,眼鏡用レンズとして屈折率を高めるためである。Ag,Cl,Brはハロゲン化銀微結晶の原料となる。Fは同じハロゲン元素ではあるが,むしろ,ガラスの溶融を容易にするために加えられていると考えたほうがよい。CuOは着色の感度を上げるための増感剤であり,CdOは退色速度を大きくする働きがある。
→フォトトロピー
執筆者:安井 至
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…古くから使用されてきたK2O‐PbO‐SiO2系ガラスでは,高屈折率低分散,低屈折率高分散のガラスが得られないため,前者のためにはLa2O3含有ガラス,後者にはフッ化物を含有するガラスが開発された。光の強さによって透過率が変化するフォトクロミックガラスは,ガラス中にハロゲン化銀微粒子を析出させたものであって,この微粒子が光化学的に分解し銀コロイドを生じ光吸収を起こす。したがって母ガラス組成としては,ハロゲン化銀の溶解度や,析出のしやすさなどが問題となる。…
※「フォトクロミックガラス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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