ブルジョア経済学(読み)ぶるじょあけいざいがく(その他表記)bürgerliche Ökonomie ドイツ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブルジョア経済学」の意味・わかりやすい解説

ブルジョア経済学
ぶるじょあけいざいがく
bürgerliche Ökonomie ドイツ語

資本主義の発生とともにその産業資本担い手となった近代ブルジョアジー階級立場と利益を代弁する経済学のイデオロギー的総称。ブルジョア経済学の特徴は、資本主義を社会的生産の発展における一つの歴史的に特殊な形態として認識することができず、社会的生産の永遠の自然的形態であると想定して、絶対的・究極的形態とみなすブルジョア的視野にたっており、したがってその経済的諸概念は、ブルジョア的生産関係に対する社会的に妥当な思惟(しい)形態となっている。このブルジョアジーを担い手とする資本主義は、それ自体の歴史的進歩性と過渡性とをもっているが、その思惟形態の展開としてのブルジョア経済学も資本主義の展開とともに変化する。すなわち、ブルジョアジーとプロレタリアートとの階級対立が潜在的な段階では科学性を保持しうるが、階級対立が激化し、激化すればするほど、俗流的・弁護論的性格を強める。階級対立の潜在的な資本主義の生成期、その確立以前には、A・スミスやD・リカードのようにブルジョア的生産関係の内面的な連係を探った古典派経済学として現れた。だが、ブルジョア社会を絶対的永遠のものとみているので、もろもろ前後撞着(どうちゃく)、中途半端、未解決の矛盾に陥っている。ここではなお経済学の俗流性が科学的要素と完全に分離していない段階である。しかし、19世紀の20、30年代に資本主義が確立し階級対立が激化すると、ブルジョアジーの立場を鮮明にして俗流的性格を強め、労働価値説を放棄して需給的価格論に終始し、土地地代労働賃金、資本―利子の三位(さんみ)一体の範式に依拠する俗流経済学として資本主義の弁護論になるに至ったのである。

[海道勝稔]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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