地球のテクトニクス(大規模な変動)は、マントル内の大規模な対流運動、すなわち、プリュームとよばれる上昇流と下降流によって支配されるとする新理論。1992年ころから深尾良夫(東大地震研)、丸山茂徳(東京工大)らが提唱している。最近、医学におけるX線CTに似た地震波トモグラフィにより、マントル内の詳細な地震波速度構造の解析が行われ、地域によって速度の異常なところがあることがわかってきた。とくに400キロメートルより深いマントルの地震波速度構造はマントルの温度構造に対応し、地震波速度が遅い部分は高温、速い部分は低温を示す。前者ではホットプリュームとしてマントル下部から上昇し、後者ではコールドプリュームとして下降している。地震波速度構造解析の結果、南太平洋およびアフリカの下には巨大な上昇流、アジアの下には巨大な下降流の存在が推定されている。地球の大局的な物質対流の様式は、これら巨大なプリュームに規制されている。かつての超大陸は上昇する巨大なホットプリュームにより分裂、移動し、下降する巨大なコールドプリュームはそれらを引き寄せ、衝突・合体させる。この理論は、プレートテクトニクスが地球表層のテクトニクスに限られるのに対し、地球全体の動きをとらえ、超大陸の形成・分裂や生物大絶滅の原因なども明らかにしようとするものである。
[長宗留男]
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