ホットスポット(その他表記)hot spot

翻訳|hot spot

デジタル大辞泉 「ホットスポット」の意味・読み・例文・類語

ホット‐スポット(hot spot)

紛争地域。また、危険な場所。犯罪の多発地帯。「空き巣のホットスポット
人気のある場所。現在、注目されている施設や場所。流行の盛り場。
マントル内部の特別な高温部。マグマを発生し続け、その上で火山活動が起きていると考えられる場所。ハワイ島はその典型。
原子力発電所の爆発事故の際に、点状に生じる放射能汚染の激しい地域。
機械の内部などにある熱だまり。
(hotspot)⇒Wi-Fiワイファイスポット
(hotspot)生物多様性が高いにもかかわらず、生態系破壊の危機にひんしている地域。1988年に英国の生物学者ノーマン=マイヤーズが提唱。生態系保全活動に取り組む国際NPOのコンサベーションインターナショナルにより、熱帯アンデス、東南アジアのスンダランド、イランのアナトリア高原アフリカの角日本列島などが指定されている。

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精選版 日本国語大辞典 「ホットスポット」の意味・読み・例文・類語

ホット‐スポット

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] hot spot )
  2. 海洋底で、マントルからのマグマの熱流が、海嶺のように線状ではなく、点状になって隆起した地点。ハワイ諸島などはこの上にできた火山島と考えられている。〔大滅亡(1974)〕
  3. 紛争、伝染病、汚染などの危険地点。特に、原子力発電所の事故などによって点状に生じた、放射能汚染の激しい地域。

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改訂新版 世界大百科事典 「ホットスポット」の意味・わかりやすい解説

ホットスポット
hot spot

ハワイ諸島のようにプレート内部の孤立した地点で起こっている火成活動のこと。マントル深部(もしかするとマントル核境界)から,風のない時に線香やタバコの煙がまっすぐ上に立ち上るように,重力に逆らって線状に上る熱的上昇流(マントルプリュームmantle plume)によって海底リソスフェアのごく狭い地点が熱せられてとけ,マグマ溜りを生ずるためであると考えられる。マントルプリュームの径は数km以下で,長さは100kmをこえ1000kmにもおよぶこともあるらしいが,そのような上昇流がマントルにおいて熱的に安定なことは理論的にも示されている。

 ホットスポットは1億年近くにもわたってほとんど同じ地点で活動を続ける性質がある。その上をリソスフェアが移動すると,ホットスポットの軌跡が火山島または海山の列として残る。ハワイ諸島ではキラウェアなどの活火山をもつハワイ島から西北西に向かって3500kmほど島やサンゴ礁や海山の列が続く。島や海山をつくる海山の列はキラウェア火山からの距離が遠くなるほど年代が古くなる。また遠い島ほど激しい浸食をうけ,ミッドウェーのような環礁になり,ついに海山の列となる。海山列は東経175°付近で北北西に向きをかえ,天皇海山列へとつながる。天皇海山列の岩石の年代はやはりキラウェア火山からの距離にほぼ比例して古くなる。最北端の明治海山の生成年代は約7000万年前である。海山列が西北西から北北西へ向きをかえる点の年代は約4200万年前である。それ以前は太平洋プレートは北北西に移動していたのに,この時に急に移動の向きを西北西にかえたことがわかる。ホットスポットが1点に止まっている限り,こうして求められたプレート運動はマントル深部に対する絶対運動であり,プレート相互間の相対運動ではない。

 現在北緯45°に位置する推古海山から掘削船グローマー・チャレンジャー号によって掘削された岩石の自然残留磁気の伏角は,この海山が北緯25°付近でできたことを示した。推古海山がつくられた5900万年前から現在までの間に太平洋の海底はこの間に緯度にして20°分だけ北上したことになる。ハワイ島は北緯約20°に位置するから,ホットスポット自身も約6000万年間に緯度にして5°ほど南下したことを示す。

 ホットスポットは大西洋にも,アイスランド,アゾレス,トリスタン・ダ・クーニャ,ブーベなどの火山島をつくっている。これらはほとんど中央海嶺中軸上に位置している。大西洋拡大以前から存在したこれらのホットスポットの活動が大西洋の分裂をうながしたとの考えもある。また,これらの延長上の陸上にも南西アフリカの環状岩脈群Ring Dyke Complex,南アメリカ,パラナ盆地の台地玄武岩,南アメリカ,パタゴニアのジュラ紀火山岩類や,東部グリーンランドのスケアガード貫入岩体などが存在する。インドのデカン高原の玄武岩もホットスポット起源だとする考えもある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホットスポット」の意味・わかりやすい解説

ホットスポット[地殻]
ホットスポット[ちかく]
hotspot

上部マントルアセノスフェア内部から継続的にマグマが上昇する場所。マントルプルームと呼ばれる細い上昇流を通じて地殻(→リソスフェア)に噴出し,火山を形成する。マグマの生成や噴出そのものはプレート境界における発散や収束(→プレートテクトニクス)とは無関係であると考えられ,火山はプレートがホットスポット上を移動することで線状に形成・配列される。つまりホットスポット上には,プレートの収束境界(→沈み込み帯)や拡大境界(→中央海嶺)とは関連しない火山が形成される。ハワイ海嶺天皇海山列がこの例にあたり,活動を休止した火山(島)や活火山(島),および海山からなる山列は,数百万年以上にわたってホットスポット上をプレートが移動したことを示している。北西から南東に連なるハワイ諸島は北西にある島ほど古く,カウアイ島を形成する火山は約 500万年前のものであるが,南東端のハワイ島を形成する五つの活火山は 100万年未満のものである。ハワイのホットスポットは少なくとも 8000万年にわたって活動し,太平洋プレートはその上を当初は北方に,その後は北西方に年間約 8~10cmの速度で移動したとみられる。さらに約 4500万年前に向きを北方に変え,天皇海山列につながったとみられる。

ホットスポット[原子炉]
ホットスポット[げんしろ]
hot spot

原子炉の炉心内の熱的に厳しい状態にある部分。たとえば,燃料の出力あるいは表面温度の最高点である。これは,炉心内の中性子束分布・出力分布・冷却材の流れの不均一,核燃料の不均一などに起因して生じる。ホットスポットは,原子炉の熱設計において,燃料,被覆管等が溶融しないように許容温度以下にするときに考慮されるものである。出力あるいは温度の最高点と炉心全体の平均値の比をホットスポットファクターという。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホットスポット」の意味・わかりやすい解説

ホットスポット(放射能)
ほっとすぽっと
hot spot

エネルギーや化学物質が特別に高い値を示したり、ときに犯罪が多発する地域など、さまざまな事象が周辺部よりも顕著に生じる特殊な地点や環境をいう。2011年(平成23)3月に起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故が原因で放射性物質が飛散し、局地的に空間放射線量が高くなっている地点がホットスポットとよばれたことにより、広く使われるようになった。

 福島第一原子力発電所事故では、当初、放射性物質の発生源である発電所から同心円状の地域で放射能汚染が深刻化することが予想されたが、自治体などの調査から東日本の広い地域で局地的に高い放射線量を示す地点が次々と明らかになった。放射能汚染はヨウ素や特定のセシウムなどの放射性物質が空間に飛散して広がることによる。このとき、放射性物質は空気中のちりなどに付着し、風の影響で遠くへ運ばれ、雨や雪などが降れば、いっしょに地表へ落ちると考えられている。そのため、事故発生後数日間の発生源と天候の状態がとくに汚染と関係していることがわかり、放射性物質を帯びた雲による降雨があった発電所の北西方向の福島県の広い地域や、関東平野に点在する雨が降った地域などで高放射線量地点が確認された。さらに細かく放射線量を測定していくと、水が集まる排水溝や落ち葉が風で吹きだまる所、河川の一部分や下水処理施設など、風や雨水に含まれる放射性物質が集まってとどまる場所に、ホットスポットが生じていた。該当地域では放射性物質を洗い流す、あるいは、土壌ごと除去する方法で除染が行われている。

[編集部]


ホットスポット(地学)
ほっとすぽっと
hot spot

広い海盆の中にあって、マントルの奥深くからのマグマの熱流がちょうど大気中の竜巻のようにクラストを通って噴出している所。海洋地球物理学の用語。ハワイ島はホットスポットの上にできた火山島の典型である。1960年代から1970年代にかけて、アメリカのウィルソンモルガンによって提唱された。この仮説の重要な点はプレートテクトニクス理論において、ホットスポットがマントル深部に固定した座標系を与え、プレート(板状岩石圏)の絶対運動を決めることにある。この説によれば、ハワイ諸島や大西洋のワルビス海嶺(かいれい)のように地震活動のない海嶺は、マントル深部に起源をもつマグマの上を海洋底拡大によるプレートが運動したためできた火山群である。これはハワイ諸島から天皇海山群に至る一連の海山群の年代配列でほぼ認められている。ホットスポットは世界で140か所もあるとする学者もあり、海洋底プレートの絶対運動の規準を与える可能性の一つとして注目を集めている。

 なお、これと似た現象に海底の熱水鉱床があるが、これは大洋の中央海嶺などで海底の割れ目にしみ込んだ海水が海底近くの熱源で熱せられ噴き出してできたもので、ホットスポットとはその存在する場所、成因が異なる。

[半澤正男]

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百科事典マイペディア 「ホットスポット」の意味・わかりやすい解説

ホットスポット

一般的には世界の紛争地域や犯罪地帯などの危険な場所,あるいは人気のある場所などの意味で用いられる。また地球科学で,マントル内部でマグマを発生しつづけ火山活動が起きている場所を指すのに使われる。この言葉が緊急性を帯びて日本で用いられるようになるのは2011年3月の福島第一原発事故以降,大規模な放射能漏洩が起きてからで,特に放射線量の高い,放射能汚染の激しい地域を指すのにこの言葉が使用される。福島第一原発事故では,大漏洩の直後の気象条件や地形によって原発から遠い距離の地点でも放射線量の高い地域が広く点在していることが判明した。ホットスポットの放射能汚染の実態調査は,12年5月現在未だ十分に行われているとはいえない。

ホットスポット

マントル深部の核―マントル境界付近から上昇するホットプリューム(プリュームテクトニクス)の真上で火山活動が起こるという場所。ハワイ島などがその例。プリュームはマントル深部からわきだすため,ホットスポットは地殻のプレートテクトニクスに対して固定点と考えられる。プレートの移動とともにホットスポット上の火山は移動してプリュームからはずれ死火山となるとされ,太平洋上にある海山列はこのようにして生成されたとされている。これらの海山の年齢から太平洋プレートの絶対移動速度が求められている。
→関連項目天皇海山群

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IT用語がわかる辞典 「ホットスポット」の解説

ホットスポット【hotspot】

無線LANBluetoothを利用してインターネットに接続するサービスを提供する場所。ホテル・駅・空港・ファーストフード店などに設置されていることが多い。◇「公衆無線LAN」「Wi-Fi(ワイファイ)ホットスポット」「無線LANホットスポット」などともいう。無料のものを特に「フリースポット」という。

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岩石学辞典 「ホットスポット」の解説

ホット・スポット

地表のホット・スポットはプレート内の火山活動の中心で,マントル深部の固定熱源から上昇するプルーム(plume)の上に位置していると考えられている.

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世界大百科事典(旧版)内のホットスポットの言及

【天皇海山列】より

…ハワイ海嶺から天皇海山列にいたる海山の成因は,マントルプリュームとプレート運動により説明される。地球表面にはアセノスフェアからたえず熱対流が上昇している地点(マントルプリュームまたはホットスポット)があり,ここでは常にマグマが生産され火山活動がおこっている。この上をプレートが通過するとこの地点の上には火山が生じ,通過したプレートの上には死火山,さらにはサンゴ礁,環礁,ギヨーなどが順々に残されていく。…

※「ホットスポット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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