ヘラドス文化(読み)ヘラドスぶんか

改訂新版 世界大百科事典 「ヘラドス文化」の意味・わかりやすい解説

ヘラドス文化 (ヘラドスぶんか)

ギリシア本土の青銅器文化。ヘラドスHelladosはギリシアを意味するヘラスにちなむ。ヘラディック文化ともいう。他のエーゲ諸文明に対応して初期,中期,後期に分けられるが,後期はミノス文明の影響のもとに変質し,飛躍的に発達するので,これをミュケナイ文明とよんで区別する。ギリシアの新石器時代にはテッサリアを中心に特色あるセスクロおよびディミニ土器をもつ文化が発達した。これらは東方からの伝来らしい。前2600年ころになると,やはり東方からの影響と思われるが,青銅器文化がテッサリアを残して中部から南部ギリシアにまで現れる。ここに始まるヘラドス文化の各時期は東方や北方からの幾度もの人種の移住をうける。初期(前2600-前1800)は原釉(ウルフィルニス)と呼ぶ釉薬のような上塗りに,ときに刻文を施した土器が特徴的である。初期末あるいは中期(前1900-前1600)初めに変化がおこり,2種の土器が現れる。一つは,光沢のない表面に簡単な文様を描いた鈍彩(マット)土器で,もう一つは黒色または灰色で,鋭い輪郭をもつミニュアス土器である。前者は器種・器形とも進歩したものであるが,後者無文で形の種類も少ないが,ろくろ作りである。議論余地はあるが,ミニュアス土器はギリシア人祖先侵入と関係づけられる。やがて両土器は融和し,黄色ミニュアス土器となり,ミノス陶器の影響がしだいに強くなってミュケナイ文明に包括される。集落は前・中期を通じて無秩序で,家屋は石と土とからなる矩形円形の1室か2室のものであった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のヘラドス文化の言及

【エーゲ文明】より

…ギリシアの中部から南部にかけて強力な青銅器文化が進出してきたからである。これがヘラドス文化であり,時間的に差はあるが,トロイア,キクラデス諸島,クレタが青銅器時代にはいる。だいたい前3000年から前2600年の間のことである。…

※「ヘラドス文化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android