ヘルツォーク&ド・ムーロン(読み)へるつぉーくあんどどむーろん(英語表記)Herzog & de Meuron

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ヘルツォーク&ド・ムーロン
へるつぉーくあんどどむーろん
Herzog & de Meuron

スイスの建築家グループ。ジャック・ヘルツォークJacques Herzog(1950― )とピエール・ド・ムーロンPirre de Meuron(1950― )の2人による建築設計の協働会社としてバーゼルで1978年設立される。2人はともにバーゼルで生まれ、幼少の頃から大の親友であった。その後スイス連邦工科大学(ETHZ)チューリヒ校でもともに学び、卒業後の77年に建築学教授のドルフ・シュネブリDolf Schnebli(1928― )のアシスタントを務めるときも一緒だった。90年、2人がドイツ、カールスルーエのサマースクールで教える機会をもった際、彼らのアシスタントについたハリー・グッガーHarry Gugger(1956― )がその後参加し、91年に共同経営者となる。さらに、94年にクリシュティーネ・ビンスバンガーChristine Binswanger(1964― )を加え、4人による共同体制を整える。グッガーはスイス、ゾーロトゥルン州のグレーツェンバッハ生まれ。ビンスバンガーはスイス、ボーデン湖岸のクロイツリンゲン生まれ。
 ヘルツォーク&ド・ムーロンは地元バーゼルを拠点に活動を開始し、現在では世界中で活躍する、20世紀後半以降のスイス建築界を代表する建築家グループである。
 「スイス・ボックス」と揶揄(やゆ)されることもある、精度こそ非常に高いが形態に関しては極めて保守的な傾向のあるスイスの近・現代建築のなかにあって、彼らはそれをベースとしつつも著しく特徴的な材料の用い方をし、極めて高い精度の建物の設計を行う。
 さまざまな建材のもっている物質的・構造的特性を最大限に引き出すようなデザインの傾向は、現代スイス建築の流れの一つの大きな特徴であるが、ヘルツォーク&ド・ムーロンの場合にはその傾向が独特な方向に突出しており、とくに、材料を素のままに用いるのではなく二次加工や三次加工を加えることにより、広く知れわたっている建材をまったく別の物につくり変えてしまう、という特徴がある。
 例えば、ガラスとコンクリートのそれぞれにまったく同一のイメージを印刷し、それらをそのまま並列的に外装材として用いたイーバースバルデ技術学校の図書館(1996、ドイツ、ブランデンブルク州)などは、同じ図像の繰り返しの外観を見せつつも、印刷された下地のガラスやコンクリートの物質的特性が加わり、それぞれの部位でまったく異なる効果を生み出している。同じことは、さらに初期のプファッフェンホルツのスポーツセンター(1993、フランス、スイス国境の町サン・ルイ)においてもすでに試みられており、例えば下地材に用いられるパターンをそのままガラス面に印刷してガラスの透過性をコントロールするのに用い、ガラスという材料そのものを質的に変化させている。
 一方、建材を素のままに用いる場合には、逆に極度に素材の可能性を肥大化させる場合が見られ、例えばアメリカのカリフォルニア州のドミナス・ワイナリー(1997)では、重く不透明な野石を積み上げることによって透過性のある壁面を構築するといった、一見矛盾する方法を取ったり、バーゼルの信号塔(1995)においては、それこそ「スイス・ボックス」と呼べるような、単なるコンクリート性の箱型建築に、銅板をぐるぐるに巻いたりと、当たり前の材料を思いもよらない方法でつぎつぎに建築化する。こうした傾向は、空間と空間との境界面の作り方に対する執着心の結果といえる。
 ヘルツォークとド・ムーロンの2人は、母校スイス連邦工科大学チューリヒ校で教授を務めるかたわら、ハーバード大学GSD(大学院大学デザイン・コース)においても客員教授を務める。また、共同者のグッガーとビンスバンガーは、スイス連邦工科大学ローザンヌ校で客員教授を務める。日本国内においても、東京都港区南青山にイタリアのファッション・ブランド、プラダのビルを設計、実現している(2002)。[堀井義博]
Natural History(2003, Lars Mller Publishers, Baden) ▽『ヘルツォーグ・アンド・ド・ムロン 1978―2002』(『a+u』2002年2月臨時増刊・エー・アンド・ユー) ▽Gerhard Mack ed. Herzog & de Meuron 1989-1991 Das Gesamtwerk Bd. 2 (1996, Birkhuser, Basel) ▽Herzog & de Meuron 1978-1988 Das Gesamtwerk Bd. 1 (1997, Birkhuser, Basel) ▽Herzog & de Meuron 1992-1996 Das Gesamtwerk Bd. 3 (2000, Birkhuser, Basel) ▽Herzog & De Meuron (2000, Birkhuser, Basel) ▽El Croquis 60+84; Herzog & de Meuron 1981-2000 (2000, El Croquis, Madrid) ▽The Pritzker Architecture Prize 2001; Jacques Herzog/Pierre De Meuron (2001, Jensen & Walker, Los Angeles) ▽El Croquis 109/110; Herzog & De Meuron 1998-2002 (2002, El Croquis, Madrid)』

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