ベックマン転位(読み)べっくまんてんい(その他表記)Beckmann rearrangement

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベックマン転位」の意味・わかりやすい解説

ベックマン転位
べっくまんてんい
Beckmann rearrangement

ケトンオキシム五塩化リンあるいは濃硫酸ポリリン酸、塩化ベンゼンスルホニルなどを作用させると置換アミドが得られる反応有機合成に重要な反応である。1886年ドイツのE・O・ベックマンは、ベンゾフェノンオキシムが五塩化リンと激しく反応してベンズアニリドを生成することをみいだした。


 ベックマン転位では、オキシムのヒドロキシ基に対してアンチ位置にある基が窒素に転位し、転位基の光学活性は保持される(図A)。シクロヘキサノンオキシムからカプロラクタムへの転位は、ナイロン原料の製造工程としてよく知られている(図B)。

[湯川泰秀・廣田 穰 2016年2月17日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ベックマン転位」の意味・わかりやすい解説

ベックマン転位 (ベックマンてんい)
Beckman rearrangement

ケトンのオキシムに酸(プロトン酸またはルイス酸)を作用させると転位してアミドを与える反応。1886年ドイツの化学者E.O.ベックマンにより見いだされた。ベックマンはベンゾフェノンオキシムに五塩化リンPCl5を作用させるとベンズアニリドが生成することを初めて見いだした。その後,一般式(1)に示すように,種々のケトンのオキシムが同様の転位を行うことが示された。

触媒として,五塩化リンのほかに,塩酸硫酸,臭化水素酸,ヨウ化水素酸塩化アセチル,無水酢酸などが有効である。転位を行う基はOH基に対してトランスの位置にある基のみ(式(1)で,R1)である。また,R1に光学活性基を用いると光学活性が失われることなく転位するので,分子内で協奏的に転位が進行することがわかる。シクロヘキサノンオキシムからカプロラクタムへの転位(式(2))はナイロン原料製造工程として使われる。


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化学辞典 第2版 「ベックマン転位」の解説

ベックマン転位
ベックマンテンイ
Beckmann rearrangement

ケトンオキシムに,PCl5,酸塩化物,H2SO4,ポリリン酸,ルイス酸などを作用させると,オキシムのOH基に対しアンチの位置にある基がOH基と入れかわって酸アミドになる分子内転位反応.

シクロヘキサノンオキシムのベックマン転位によって,ナイロン6の原料であるε-カプロラクタムができる反応は,工業的に重要である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベックマン転位」の意味・わかりやすい解説

ベックマン転位
ベックマンてんい
Beckmann rearrangement

ケトオキシムが五塩化リンまたは各種の酸の作用により酸アミドに変化する分子内転位反応。 1886年 E.O.ベックマンによって発見された。6-ナイロンの原料であるカプロラクタムは,シクロヘキサノンオキシムのベックマン転位によって合成される。

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