塩化アセチル(読み)えんかあせちる(その他表記)acetyl chloride

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化アセチル」の意味・わかりやすい解説

塩化アセチル
えんかあせちる
acetyl chloride

酢酸酸塩化物。正しくは塩化エタノイルというが、一般的には塩化アセチルといわれている。刺激臭のある無色液体

 リン存在下で酢酸と塩素ガス酢酸ナトリウム塩化スルフリル、酢酸と塩化チオニルなどの反応により合成する。エーテルベンゼンには溶けるが、水とは反応し酢酸と塩酸塩化水素)になる。アルコールとも反応し酢酸エステルとなる。カルボニル基=Oの炭素原子上で塩素原子が置換反応されやすいので、種々の有機化合物にアセチル基CH3CO-を導入するアセチル化剤として利用される。空気中で発煙し、催涙性があり、皮膚、目、粘膜を刺激する。

[谷利陸平]


塩化アセチル(データノート)
えんかあせちるでーたのーと

塩化アセチル
  CH3COCl
 分子式 C2H3ClO
 分子量 78.50
 融点  -112℃
 沸点  50.9℃
 比重  1.104(測定温度20℃)
 屈折率 (n)1.3878

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「塩化アセチル」の意味・わかりやすい解説

塩化アセチル (えんかアセチル)
acetyl chloride

酢酸の酸塩化物。化学式CH3COCl,沸点50.9℃の無色の液体で,湿った空気中では発煙する。不快臭を有し目を刺激する。水と激しく反応して,酢酸と塩酸に加水分解する。アセチル化剤として有用で,第一および第二アミンと反応してアセトアミド類を生成し,またアルコールとの反応では酢酸エステルを与える。芳香環に対してはフリーデル=クラフツ反応によりアセトフェノン誘導体を与える。塩化アセチルは,酢酸に塩化チオニルSOCl2や三塩化リンなどを作用すると得られるが,実験室的に最も簡便な合成法は無水酢酸と塩化カルシウムとの反応である。工業的には酢酸と塩化スルフリルSO2Cl2との反応で合成される。有機物中の水分の定量試薬として用いられることがある(水との反応で生成する塩酸と酢酸を水酸化ナトリウム標準溶液で滴定する)。
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化学辞典 第2版 「塩化アセチル」の解説

塩化アセチル
エンカアセチル
acetyl chloride

C2H3ClO(78.50).CH3COCl.酢酸の酸塩化物.工業的には,無水酢酸とホスゲン,酢酸ナトリウムと塩化スルフリルなどの反応でつくられるが,酢酸に三塩化リンを作用させても得られる.無色,刺激臭のある液体.融点 -112 ℃,沸点52 ℃.1.104.1.389.湿った空気中で発煙して分解する.アセチル化剤として広く用いられる.[CAS 75-36-5]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化アセチル」の意味・わかりやすい解説

塩化アセチル
えんかアセチル
acetyl chloride

酸塩化物の一種。化学式 CH3COCl 。眼や鼻を刺激する無色の液体。沸点 51~52℃。水に不安定で,空気中の水分でも分解して酢酸と塩化水素を発生する。空気中の水蒸気によっても容易に分解し,発煙する。またアンモニアと反応してアセトアミドと塩化水素を生じ,エチルアルコールと反応して酢酸エチルと塩化水素を生じる。代表的なアセチル化試薬。たとえばアミノ基,水酸基などをもつ有機物と反応し,アセトアミノ誘導体,アセトオキシ誘導体をそれぞれ生じる。ベンゼン,クロロホルムとは反応せず,これらによく溶ける。

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