カプロラクタム(読み)かぷろらくたむ(その他表記)caprolactam

デジタル大辞泉 「カプロラクタム」の意味・読み・例文・類語

カプロラクタム(caprolactam)

環状アミドの一。無色の葉状結晶融点はセ氏68~70度。シクロヘキサンから合成により得られる。ナイロンの製造原料分子式C6H11NO

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カプロラクタム」の意味・わかりやすい解説

カプロラクタム
かぷろらくたむ
caprolactam

ラクタム(環状アミド)の一つ。5-アミノカプロン酸ラクタムともいうが、正しくはε(エプシロン)-カプロラクタムという。吸湿性の葉状晶。水、エタノールエチルアルコール)、エーテルベンゼンジメチルホルムアミドなどによく溶ける。カプロラクタムを開環重合させ繊維としたものがナイロン6であり、工業的な需要が大きいので種々の合成法が開発されている。ベンゼン、トルエンあるいはフェノールを粗原料としてシクロヘキサノンオキシムをつくり、これを濃硫酸と加熱しベックマン転位によってカプロラクタムとするのが一般的であるが、5-アミノカプロン酸を環化する方法、ε-カプロラクトンにアンモニアを作用させる方法、シクロヘキサノンにアジ化水素酸を作用させる方法などもある。ナイロン6の原料となるほか、他の単量体との共重合によって共ポリアミドを合成する原料としても用いられている。

山本 学]



カプロラクタム(データノート)
かぷろらくたむでーたのーと

カプロラクタム

 分子式 C6H11NO
 分子量 113.16
 融点  69℃
 沸点  139℃/12mmHg

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改訂新版 世界大百科事典 「カプロラクタム」の意味・わかりやすい解説

カプロラクタム
caprolactam

ε-アミノカプロン酸NH2(CH25COOHのラクタム(-NHCO-結合をもつ環状化合物)。ナイロン6の原料である。ナイロン66とナイロン6はよく似た化学構造および繊維としての性質をもつが,原料が異なっており,カプロラクタムが安価に製造されるようになって,ナイロン6がナイロン66より優位に立っている。カプロラクタムを加圧反応器(オートクレーブ)中で高圧で加熱することにより,約200個のカプロラクタムが重合して一つのナイロン6高分子を形成する。別の重合法では,カプロラクタムに重量で10%の水を加えて高温で反応させる。加熱下では,カプロラクタムは開環したε-アミノカプロン酸のように挙動し重合する。工業的に実施されているおもな製造工程を図に示す。(1)ベンゼンを出発原料として,シクロヘキサンを経てシクロヘキサノンを合成する。これにヒドロキシルアミンを反応させてシクロヘキサノンオキシムを作り,次に硫酸によってベックマン転位を起こさせることによりカプロラクタムが得られる。(2)ベンゼンから作ったシクロヘキサンと塩化ニトロシルに光照射して,シクロヘキサノンオキシム塩酸塩とする。日本の東レ法と呼ばれる合成法で,安価に合成できる。(3)トルエンからカプロラクタムを安価に合成する方法で,イタリアで開発された。

 葉状晶で,融点69℃,沸点139℃(12mmHg)。ベンゼン,エーテル,エタノール,水に可溶。
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化学辞典 第2版 「カプロラクタム」の解説

カプロラクタム
カプロラクタム
caprolactam

6-hexanelactam.C6H11NO(113.16).シクロヘキサノンオキシムのベックマン転位により合成される物質で,ε-アミノカプロラクタムをいう.潮解性の白色の結晶.融点65~68 ℃,沸点139 ℃(0.016 atm).水,エタノール,エーテル,クロロホルム,ベンゼンなどに易溶.水と加熱して開環し,アミノカプロン酸H2N(CH2)5COOHとなり,開環重合するとポリアミドとなる.ナイロン6の単量体に用いられる.[CAS 105-60-2][別用語参照]ナイロン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カプロラクタム」の意味・わかりやすい解説

カプロラクタム
caprolactam

5-アミノカプロン酸ラクタムともいう。融点 68~70℃,沸点 139℃。無色の針状晶。水,エチルアルコール,エーテル,ベンゼンに可溶。水,アミノ酸などを加え,加圧,加熱すると重合して線状のポリアミドとなるので,6-ナイロンの原料となる。シクロヘキサノンをオキシムとし,そのベックマン転位により工業的に大量生産される。

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百科事典マイペディア 「カプロラクタム」の意味・わかりやすい解説

カプロラクタム

ε‐カプロラクタムの略称。潮解しやすい白色の結晶。融点69.2℃,沸点139℃(12mmHg)。水,アルコール,エーテル,ベンゼン,クロロホルムなどに易溶。アルカリ金属などの存在下で開環重合してポリアミドとなる。ナイロン6の製造原料として重要。シクロヘキサノンオキシムを濃硫酸と加熱してつくる。(図)

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