ペン(筆記具)(読み)ぺん(英語表記)pen

翻訳|pen

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペン(筆記具)」の意味・わかりやすい解説

ペン(筆記具)
ぺん
pen

筆記具一種。鋼ペン先のことで、ペン軸に取り付けて液体インキを含ませ、文字などを書写する。ラテン語のpenna(鳥の羽)が語源である。

[野沢松男]

歴史

古代エジプトでアシの茎でつくったペンを用いたのが最初といわれる。ヨーロッパではガチョウの羽の先端を斜めにカットし、切れ目を入れてペンに用いた。現在のような鋼ペン先は18世紀に入ってからで、1780年にイギリスの金具師サミュエル・ハリスンが初めて一種の鋼ペンをつくったが、1830年に同じくイギリスのジェームス・ペリーが、現在の基礎をなす鋼ペンをつくり、機械で大量生産を行ってから一般に用いられるようになった。日本には1872年(明治5)にインキとともに輸入され、文明開化の波にのって一部の知識階級に普及した。国産のものは1902年(明治35)石川徳松が製造したのが最初である。しかし、筆記具が多様化した現在、ペンはあまり使われなくなった。

[野沢松男]

種類

日本の鋼ペンは当初イギリスから輸入されていたため、その形状の基本はイギリス製品と類似している。また最近では、製品の幅も特殊用途のものへと広がり、種類も多岐にわたっている。一般に多く用いられているものを大別すると、次のようになる。(1)さじペン(タマペン、スプーンペンともよばれる) 一般筆記に用いられる。(2)日本字ペン 縦書きの日本文字を書くのに適した日本独特のペンで、一般の鋼ペンに比べ弾力性に富み、書写時の力の入れぐあいによって太い線、細い線が自由に書ける。(3)Gペン 英字を書く場合に用いられるもので、縦方向に書くと太く、横方向では細い。アルファベットが美しく書ける。(4)スクールペン 学生用で、ノート書きに適し、細くて美しい線が書ける。(5)銀行ペン 細書き用で、帳簿記入などに適している。(6)その他 特殊用途として、ラウンドペン、鉄道ペン、楽譜ペン、製図用ペン、丸ペンなどがある。そのほか、インキの補給回数を少なくするために考案された、ペン先のインキ含有量を多くするような構造をもたせたリザーボアペンもある。

[野沢松男]

製造方法

材質は特殊鋼を用いたものが多く、表面処理にはニッケルクロム、銅などのめっきが施されている。製造方法は、特殊鋼を自動プレス機によって打ち抜き、それに丸みをつけてペン形状にしたものを高熱で二度焼きし、地金にほどよい弾力性をつける。表面を研磨したのち、先端の弾性を加減するために、その先端の厚みを薄くする。次に先端を二等分して先切りを行い、ペンによっては先端の紙当たりの部分の丸みをつけるなどの加工をしたのち仕上げ磨きをし、めっき処理を行ってできあがる。購入時には、ペン先端を押し当てたとき左右等分に開くものを選ぶとよい。

[野沢松男]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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