マラエ(その他表記)marae

改訂新版 世界大百科事典 「マラエ」の意味・わかりやすい解説

マラエ
marae

南太平洋,フランス領ポリネシアソシエテ諸島トゥアモトゥ諸島の宗教遺跡。単なる立石遺跡から壮大な石積みの遺跡までを含み,宗教的儀式を行う聖域であった。ソシエテ諸島の風上群島風下群島では,かなり異なった形態をもった規模の大きい祭祀場が西欧文化接触直前まで建造された。風上群島のものは石垣長方形に築き,その一方の端に石積みの上部にいくほど小さくなる3段の聖壇を置き,前に3基の立石,内庭にも立石を配しているが,これらは儀式の際,神やすでに死亡した酋長らの霊魂の宿る所であった。風下群島では石垣はなく,サンゴの岩板を並列した長方形の聖壇をもち,敷石前庭のあるものが多く,立石も認められる。マラエの規模には建造者の権力の強さが反映したと思われる。時代によって型式の変化が認められるが,最近のフアヒネ島の調査によると,マラエの発達は風下群島から風上群島へと移行し,後期に上記の特徴的な形式がおのおのの群島で発達したようである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マラエ」の意味・わかりやすい解説

マラエ
Marae

東ポリネシアのソシエテ,ツァモス,マンガレバなどの多くの島に分布する祭祀遺跡。長方形の区画を敷石,縁石石壁,壇などで区画しており,奥の1辺に沿って1段以上高いアフと呼ばれる部分をもつものが多い。アフの上や前後,他の各辺に沿って背もたれ状に立石を座席のように配置している。

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世界大百科事典(旧版)内のマラエの言及

【トゥアモトゥ[諸島]】より

…総面積約900km2,人口約9000。多くのマラエ(石造の宗教遺跡)があり,考古学上の関心を呼んでいるが,東部に残されたマラエはハワイやタヒチ内陸部との共通性を示し,トンガ諸島やサモア諸島のものとは異なる。1929年アマヌ島でサンゴにおおわれた4門の大砲が発見されたが,オーストラリアの歴史学者ランドンR.Langdonは,これらの大砲を1526年にこの海域で遭難したスペイン快速帆船サン・レスメス号のものと考え,この船の生残りがポリネシア人女性と結婚し,ニュージーランドやイースター島を含むポリネシアの島々に広がって大きな文化的影響を与えたと主張した。…

【トゥブアイ[諸島]】より

…長さ8km,幅4kmの島にはヒロ山(約440m)がそびえ,島の周囲はサンゴ礁に囲まれている。古いマラエ(石造の宗教遺跡)や,イースター島のものに似た石像があることでも知られる。ラパ島(人口約400)は,イースター島の別名ラパ・ヌイ(大ラパ)と区別するためラパ・イティ(小ラパ)とも呼ばれる。…

【ニュージーランド】より

…部族間の戦争が多く,負けた部族は奴隷になった。ポリネシアに共通のマラエと呼ばれる聖地あるいは集会場が村落生活の中心で,戦争ではパpaという砦に戦士がたてこもった。首長も兼ねた聖職者は,さまざまのタプtapu(禁忌)を定め,法律や警察の役割を果たした。…

※「マラエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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