改訂新版 世界大百科事典 「マラエ」の意味・わかりやすい解説
マラエ
marae
南太平洋,フランス領ポリネシアのソシエテ諸島,トゥアモトゥ諸島の宗教遺跡。単なる立石遺跡から壮大な石積みの遺跡までを含み,宗教的儀式を行う聖域であった。ソシエテ諸島の風上群島,風下群島では,かなり異なった形態をもった規模の大きい祭祀場が西欧文化接触直前まで建造された。風上群島のものは石垣を長方形に築き,その一方の端に石積みの上部にいくほど小さくなる3段の聖壇を置き,前に3基の立石,内庭にも立石を配しているが,これらは儀式の際,神やすでに死亡した酋長らの霊魂の宿る所であった。風下群島では石垣はなく,サンゴの岩板を並列した長方形の聖壇をもち,敷石の前庭のあるものが多く,立石も認められる。マラエの規模には建造者の権力の強さが反映したと思われる。時代によって型式の変化が認められるが,最近のフアヒネ島の調査によると,マラエの発達は風下群島から風上群島へと移行し,後期に上記の特徴的な形式がおのおのの群島で発達したようである。
執筆者:篠遠 喜彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報