日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤップ島」の意味・わかりやすい解説
ヤップ島
やっぷとう
Yap
太平洋北西部、カロリン諸島の西部にある島。詳しくいえば、ルムング、マップ、ガギル・トミル、ルール(これをヤップ島という)の四つの島が一島のように密接しているのでヤップ諸島ということもある。合計面積101平方キロメートル、人口1万5600(2001推計)。最高峰はタビウォルTabiwol山(178メートル)。日本委任統治時代(1919~45)のヤップ支庁所在地。ミクロネシア連邦(1979自治政府発足)のヤップ地区行政機関がコロニアColoniaにある。石貨とグラス(草)・スカートの島として知られ、石の舗装路や石の舞台など古代遺跡に富む。
[大島襄二]
住民
島民の言語であるヤップ語はオーストロネシア語族の一員であるが、中核ミクロネシア語とは系統上一線を画し、正確な系統上の位置づけは不明である。伝統的島民の生計は女性の耕作によるタロイモ、ヤムイモと男性による漁労に依存している。カロリン諸島の母系制社会の領域にあるが、ヤップの基本的生活単位は狭い範囲の父系的拡大家族で、それは特定の屋敷と結合している。他方、母系氏族は、夫方居住婚であるのでその成員は各村に分散している。ヤップの政治・社会体系を支配しているのは身分的階層秩序で、ヤップ島は百数余の村落に分割されていて、村そのものに階級があり、上層階級(ピルン)の村と下層階級(ミリンガイ)の村に二分される。
北部のカギール地区の村は、宗教的権威を背景に、東方離島のウルシー環礁を経て、チューク諸島(トラック諸島)近くのノモヌウィト環礁に至る広大な海域における貢納・交易網を支配した。この島では儀礼的に貴重品を交換することを通じて、社会関係が維持されている。このような儀礼的貴重品である石貨と貝貨は、現在も人々の間で生き生きと交換されている。
[牛島 巖]
『牛島巖著『ヤップ島の社会と交換』(1987・弘文堂)』