翻訳|Michigan
アメリカ合衆国、五大湖地方の州。面積15万0779平方キロメートル、人口993万8444(2000)。州都ランシング。上部と下部の二つの半島からなり、五大湖のうちミシガン湖、ヒューロン湖、スペリオル湖、エリー湖に面しており、北のカナダをはじめ、インディアナ州、オハイオ州、ウィスコンシン州と境を接する。両半島の間のマキナック水道には世界第9位(1999現在)の吊橋(つりばし)のマキノ橋が架かり、サギノー、グランド、カラマズーなどが主要河川である。気候は一般に冷帯多雨気候を呈する。上部半島と下部半島の北半分は丘陵地で、森林が広がり、大小の河川や湖が点在する豊かな自然は観光資源として注目されるほか、鉄、銅などの鉱物資源にも恵まれる。五大湖平野の肥沃(ひよく)な土地と気候に恵まれた下部半島南部には、南東端部のデトロイトをはじめ、グランド・ラピッズ、ウォーレン、フリント、ランシングなど州内のほとんどの大都市が集中し、合衆国第8位にランクされる州人口の90%がこの地域に集まっており、周囲には工業地帯と農業地帯が広がる。州最大の産業である工業は、デトロイト、ディアボーン、ポンティアックなどを中心とした世界最大の自動車工業が多くの問題をかかえながら健在であり、航空機部品、電気機械、金属、プラスチック、食品加工、製紙、家具など多種工業が各地で発達する。農業では、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、サトウダイコンなどが栽培され、リンゴ、サクランボ、イチゴ、ブドウといった果樹栽培でも知られる。また、牧畜も盛んである。鉄鉱、銅、砂利などの鉱業も重要で、最近は新たに多量の石油、天然ガスが発見されており、漁業も見逃せない。工業と並ぶ勢いの観光業は、将来ますます発展の余地があると思われる。50州中最長の沿岸線(3570キロメートル)と約1万1000に及ぶ大小の湖や河川は、とくに釣り人を多く集め、アイル・ロイヤル国立公園やスリーピング・ベア砂丘、ピクチャード・ロックスなどの湖岸公園に代表される自然の美しさが多くの観光・行楽客を魅了している。マキナック島は避暑地として古くから有名である。
17世紀初頭、インディアンの住むこの地にフランス人が入り、1668年に最初の町が開かれ、1701年にはデトロイトも誕生した。1763年イギリスに割譲されたのち、83年に合衆国領となった。ノース・ウェスト準州、インディアナ準州を経て、1805年にミシガン準州として分かれ、37年に第26番目の州に昇格した。その後、道路や鉄道網などが整備されて順調な発達を遂げ、20世紀初頭は自動車工業を中心とした急速な工業化と都市化がみられ、大量の移民で人口も急激な増加を示した。教育・文化面にも優れ、ミシガン大学がその中心にある。州名は、チペワ・インディアン語で「大きな湖」を意味する。
[作野和世]
アメリカ合衆国中西部の自動車工業州。略称Mich.。連邦加入1837年,26番目。面積14万7121km2,人口988万3640(2010)。州都ランシング,最大都市デトロイト。州名は〈大きな湖〉という意味のチペワ・インディアン語に由来する。その名のとおり,ミシガン湖,ヒューロン湖にかこまれ,南北二つの半島からなっている。上部(北部)半島はスペリオル湖にも面し,山地,丘陵が多いが,下部(南部)半島は低い丘陵と平地が続く。湿潤大陸性気候の根雪地帯で日本の北海道に似ている。アメリカ自動車工業の中心地で,GM(ゼネラル・モーターズ)もフォード・モーター会社もこの州内に本社がある。19世紀には林業が盛んであったが,植林をしない略奪林業のため,19世紀末には伐採跡地のみになってしまった。ミシガンは馬車の生産が全米一で職工にも恵まれ,自転車生産も盛んであった。こうした伝統の上に,20世紀に入ると林業に代わる産業として自動車が登場する。1908年には大衆車フォードT型の大量生産が始まり,ウィリアム・デュラントがGMを創立した。フォードの〈1日5ドル〉の賃金は多くの労働者をひきつけ,35年には全米自動車工組合UAWが結成されている。自動車産業はデトロイトを中心にフリント,ポンティアック,ランシングなどの州南東部に集中している。農牧業はおもに下部半島で行われ,ミシガン湖東岸はサクランボ,リンゴなどの果樹栽培が盛んである。また,上部半島のスペリオル湖岸一帯は全米有数の鉄鉱石産地である。
執筆者:正井 泰夫+岡田 泰男
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