もと

日本大百科全書(ニッポニカ) 「もと」の意味・わかりやすい解説

もと
もと / 酛

酒母(しゅぼ)ともいう。もろみ発酵させるもとになる酵母(こうぼ)(イースト)を培養したもの。ビールやアルコールもろみの発酵に用いる酒母は、殺菌した麦汁などに酵母を純粋培養したものであるが、日本酒造りでは、「一麹(こうじ)、二もと、三造り」といわれるように、もと造りは重要な操作で、その作り方も複雑である。

 原理は、強い酸性の条件下で(加熱殺菌の操作を行わずに)、清酒酵母純粋に培養するもので、その酸性をつくりだす手段として、乳酸菌を応用する伝来の方法と乳酸を用いる方法とがある。乳酸菌を用いる酒母には、「生酛(きもと)」およびその改良型である「山廃酛(やまはいもと)」の二つがある。生酛の作り方の原理は、まず蒸し米と麹と水とを低温(6~8℃)で仕込み、自然に増殖してくる乳酸菌と硝酸還元菌によって、清酒酵母だけが生育可能な条件をつくりだすことにある。しかしこの方法は、「もと」ができあがるまで約1か月もかかり、作業も繁雑である。この工程を、乳酸を用いることにより一挙に解決したのが「速醸酛(そくじょうもと)」で、今日広く用いられている。作り方は、蒸し米7、麹3、水12(乳酸0.5%を加える)の割合で混ぜ、さらに優良な純粋培養の清酒酵母を加えて、約20度Cに保つと糖化と発酵が進み、わずか数日で酒母ができる。

[秋山裕一]

『大塚謙一編著『醸造学』(1981・養賢堂)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「もと」の意味・わかりやすい解説

もと

清酒を造るとき,原料 (もろみ) を発酵させるための酵母の培養物。酒母ともいう。

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世界大百科事典(旧版)内のもとの言及

【口】より

…《ヨハネの黙示録》に天使と戦って敗れ地に落ちたドラゴンの話があるが,このドラゴンが口を開いて地獄の入口となった。ウガリト神話の死の神モトの口は,上下の唇が天地に達してバアルを入れたし,ゲルマン神話のオオカミのフェンリルに立ち向かった神々の父オーディンは,天地に達するまで開くオオカミの口内に飲み込まれて死んだ。 固く結んだ口は男性的だが,円く開いた口は陰門を示唆して女性的である。…

【シリア・カナン神話】より

…母はアシュタロテ(アスタルテ),すべての神々の母であった。兄弟のひとりは,洪水の神ヤム・ナハルYam‐Nahr,他のひとりは死の神モトMotで,火の空でもって大地を乾燥させる神である。バアルは,この2人の兄弟と王権をかけて雌雄を決しなければならない。…

※「もと」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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