ヤング(Neil Young)(読み)やんぐ(英語表記)Neil Young

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ヤング(Neil Young)
やんぐ
Neil Young
(1945― )

カナダのシンガー・ソングライター、ギタリストトロント生まれ。1960年代から活躍していたベテランだが、1990年代、オルタナティブ・ロックの出現で再評価された。バッファロースプリングフィールド、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングといったウェスト・コースト・ロックの歴史のなかでの最も重要なグループをともに結成するスティーブン・スティルスStephen Stills(1945― )とハイスクール時代に出会っているが、アメリカ人であるスティルスのビザの関係でそのときはともに活動することはできなかった。

 1960年代なかばに、リッチー・フューレイRichie Furay(1944― 、後にポコを結成)とスティルスがロサンゼルスでバッファロー・スプリングフィールドを結成、ヤングもこのグループに参加する。このグループはバーズの推進したフォーク・ロックをさらに進化させ、ブルーグラス(ギター、ウッド・ベース、フラット・マンドリンバンジョーフィドルなどのアンサンブルにハイ・トーンボーカルがのる音楽)、カントリー・アンド・ウェスタンソウル・ミュージックといったさまざまなアメリカン・ミュージックをロックン・ロールと混交させることに成功し、多くの模倣者を生む。また、2作目のアルバム『アゲイン』(1967)は名盤と名高い。

 その後、ヤングはシンガー・ソングライター、個性的なギタリストとして頭角を現す。バッファロー時代に共同作業をしたアレンジャー、ジャック・ニッチェJack Nitzsche(1937―2000)のプロデュースのもと1969年『ニール・ヤング』でソロ・アーティストとしてデビュー。同年、彼のバック・バンドを務めるクレイジー・ホースを率い『ニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホース』をリリースする。このアルバムでは叙情的なナンバーと、たががゆるんだように延々と続くガレージ・サウンド(1960年代後半にアメリカのティーンエイジャーにより演奏された音楽。ガレージを練習場所にしたことが名前の由来)風の轟音という、後にヤングの音楽の二つの側面がすでに見られる。

 1970年にはスティルスと合流し、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング名義で『デジャ・ヴ』をリリース。アルバム収録曲の「ティーチ・ユア・チルドレン」は大ヒットし、ヤングの名声は揺るぎないものになった。1970年代初頭は、『アフター・ザ・ゴールドラッシュ』(1970)、『ハーヴェスト』(1972)というカントリー・ロック風の生楽器主体のアルバムを発表。後者からはヒット曲「孤独の旅路」も生まれる。その後はテクノからロカビリーにまで挑戦し、1979年、パンク・ムーブメントに呼応した『ラスト・ネバー・スリープス』、ライブ盤『ライブ・ラスト』を立て続けにリリースする。1980年代はゲフィン・レーベルに移籍し、さまざまなスタイルに挑戦したものの音楽的な成果は見られなかったが、『フリーダム』(1989)、『傷だらけの栄光』(1990)で復活。1990年代は『ニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホース』で聞かせたガレージ・サウンドを展開し、オルタナティブ・ロックのゴッド・ファーザーとしてロック・シーンに君臨。1992年には『ハーヴェスト・ムーン』のようなヒット・アルバムもリリースした。

[中山義雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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