翻訳|techno
シンセサイザーやリズム・マシンといった電子楽器を中心的に用いたポップ・ミュージックの総称。第二次世界大戦後の西欧芸術音楽の実験的動向の影響を強く受けた1970年代ドイツの実験的ロック・シーンから、クラフトワークが登場し、反復的なシンセ・ビートをバックに無機的な電子音楽を生み出したのがその誕生とされる。初期テクノはしばしばテクノ・ポップと呼ばれ、日本からはイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)が登場し世界的に人気を博した。クラフトワークの音楽は初期のヒップ・ホップのサンプリング素材としても多用され、エレクトロと呼ばれるテクノの隣接ジャンルを形成している。
80年代中期には、電子楽器を多用したダンス・ミュージックであるハウスがアメリカで発生し、さらにデトロイトの黒人青年、デリック・メイDerrick May(1963― )、ケビン・サンダーソンKevin Saunderson(1964― )、フアン・アトキンスJuan Atkins(1963― )の3人が中心となって、より電子音楽色の強いダンス・ミュージックが作り出された。これがデトロイト・テクノとしてイギリスに紹介され、テクノはクラブ・ミュージックの一ジャンルとして発展していくことになる。
90年代になると、クラブ・ミュージックとしてのテクノに「脱ダンス」を目指す動きが目立ち始める。ベルギーのレーベル、ワープ・レコードからリリースされたオムニバス・アルバム『アーティフィシャル・インテリジェンス』(1992)はその先駆けとなり、クラブ・シーンに向けられたダンス音楽ではない、電子音楽としてのテクノのアイデンティティがその後確立されていくことになった。
その後のテクノは、芸術音楽における実験的な動向とも関連しつつ、より広く電子音楽の総称としての色彩を強めている。完全にダンス音楽としてのアイデンティティを喪失し、むしろ実験音楽に近いスタンスを持ったテクノ(オバルやミクロストリアなど)は、エレクトロニカというジャンルに含められることが多い。
[増田 聡]
『野田努著『ブラック・マシン・ミュージック――ディスコ、ハウス、デトロイト・テクノ』(2001・河出書房新社)』
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