ラーファター(英語表記)Johann Kaspar Lavater

改訂新版 世界大百科事典 「ラーファター」の意味・わかりやすい解説

ラーファター
Johann Kaspar Lavater
生没年:1741-1801

スイス牧師。シュトゥルム・ウント・ドラング運動の著述家詩人として早くから名を知られたが,若きゲーテの協力を得て結実した観(人)相学研究は全欧に一大センセーションを巻きおこした。スウェーデンボリの心身対応論を基礎とし,膨大なデータをもとに人間の容貌からその内面の性情を科学的実証的に解明せんとした彼の観相学の中核には,隣人愛というキリスト教理念と,原罪によりそこなわれた〈神の似姿〉としての人間性の再生という終末論的救済観がある。外的現象を目に見えぬ霊的な力の顕現とみなす同様の立場から奇跡,エクソシズム悪魔祓い),メスメリズムF.A.メスマー),死後の世界,日常生活におけるキリストの教えの実践など多方面にわたる問題に精力的に取りくみ,啓蒙の時代において真の信仰とは何かを問い続けた。宗教的教化のためのすぐれた作品を数多く残した。《秘密の日記》(1771-73),《観相学断章》(1775-78),《永遠界を見る》(1768-78),《救世主イエス》(1783)などの代表作のほか,多数の詩,説教集がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「ラーファター」の意味・わかりやすい解説

ラーファター

スイスの牧師,著述家。〈北方賢者ハーマンと並ぶ〈南方の賢者〉。ゲーテ,スウェーデンボリらに示唆を得て構想された観相(人相)学研究で知られる。啓蒙の世紀に敬虔と神秘を説いた信仰の人でもある。主著《観相学断章》(1775年―1778年),《救世主イエス》(1783年)ほか。
→関連項目人相学

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のラーファターの言及

【占い】より

…そうした傾向は近世に入ってさらに促進され,多くの予言者,占星術師,神秘家が登場するが,なかでも16世紀にシャルル9世の侍医をつとめたノストラダムスは有名である。 近世以降にも,ラーファター,F.J.ガルなどが登場し,人相学,骨相学はさらなる発展を示すわけであるが,それは同時に占いから宗教的側面が失われ,世俗化・遊戯化していくプロセスとも言えよう。だが,ホロスコープやタロットによる占い,筆跡判断などが現在でも周期的に流行を繰り返していることからみても,占いには人間の精神の働きと結びつく何かが隠されているのではないかと思われる。…

【顔】より

…シェークスピアやミルトンなども作品に人相学の影響をみせ,カントやルソーも顔つきに関心をよせた。ラーファターの《人相学断章》(1775‐78)は一世を風靡(ふうび)し,多くの信奉者を得て20世紀に至っている。 多くの神話が人は神の姿に似せてつくられたとしている。…

【シルエット】より

…この形式の肖像画は,強い光を受けた人物の横顔が紙面に投ずる影を写しとり,しばしば機械的手段で縮小して作られる簡単,安価なもので,18世紀半ばから19世紀半ばにかけてヨーロッパ中で流行をみた。それには,簡潔な輪郭線による側面観の把握が時代の新古典主義的趣味にかない,人相学者ラーファターが《人相学論考》の図解に用いたことも手伝っている。19世紀にはいると紙を直接切り抜くシルエットがさかんとなり,全身像で動きを伴った作品も作られる。…

【人相学】より

…一方,G.B.dellaポルタの著《観相術》はアリストテレス学派に倣って,動物類推法により人相を系統的に論述し,P.P.ルーベンス,C.ル・ブランらの画家に影響を与えている。 さらにJ.K.ラーファターの《人相学断章》は四性論と動物類推の方法を駆使して顔貌の諸特徴を詳細に解釈した。H.deバルザックは人物描写に当たってラーファターの説を参考にしたし,当時の多くの詩人も彼の影響を受けている。…

※「ラーファター」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」