スウェーデンの自然科学者,哲学者,宗教家。ストックホルムに生まれ,自然科学を学んだが,理論ばかりでなくその応用としての工学に関心を抱く。1747年まで鉱山局に勤めるかたわら,自然科学者として一流の業績を残した。自然の根本を探求する中で,科学の経験的認識の限界を超えたさまざまなビジョンを見はじめ,1745年に,聖書の霊的な意味を霊の世界との交流の体験に基づいて明らかにするという使命を自覚,宗教家としての後半生がはじまる。神的・霊的世界と人間と自然の〈照応〉,この3者の〈生命〉としての連続,〈神の似姿〉〈ミクロコスモス〉としての人間などの考えはベーメやヘルモントらにも共通している。霊や天使の体験に基づき天国と地獄,死後の世界について語り,啓蒙主義のヨーロッパに衝撃を与え,カントの関心もひいた。イギリスやフランスでは多くの信奉者が〈新しい教会〉の形成を求めて集まり,W.ブレークやバルザックなどにも影響を与えた。日本には鈴木大拙が紹介し,《天界と地獄》(1758)など多数の著書は日本語にも訳されている。
執筆者:中井 章子
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スウェーデンボルクともいう。スウェーデンの神秘家。言語学、数学、自然科学を学び、鉱山官となる。優れた自然研究家で、大脳作用の意義を初めて明らかにした。心身問題を探究していたが宗教的危機に陥り、幻をみ、科学的方法が全実在を解明しえないことを悟る。栄職を捨て(1747)、視霊者として聖書の霊的研究に没頭。霊魂の独立存在、死後存続を信じ、自ら天使や諸霊と語り、天界と地界の対応を踏まえて、霊界などについて詳しく記述した。彼の教えはキリスト教の伝統的教説と異なる点が多い。その影響はゲーテなどにみられる。カントの『視霊者の夢』(1766)は彼への批判である。
[常葉謙二 2015年11月17日]
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…またジャンヌ・ダルクの得た幻視は有名である。この伝統はやがて,ある日突然神の啓示を受けて宗教的思索活動に身を投じたベーメや天使・精霊と対話できたと伝えられるスウェーデンボリらに受け継がれた。一方,芸術家たちも創作上の霊感を得るために幻視体験や瞑想修業を重視し,W.ブレークは〈幻視とは洗い清められた感覚で自然を見ることにほかならない〉として,詩作や絵画制作そのものを幻視体験と同一視した。…
※「スウェーデンボリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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