リン酸水素ナトリウム(読み)リンサンスイソナトリウム

化学辞典 第2版 「リン酸水素ナトリウム」の解説

リン酸水素ナトリウム
リンサンスイソナトリウム
sodium hydrogenphosphate

リン酸二水素ナトリウムリン酸水素二ナトリウムがある.【】リン酸二水素ナトリウム(monosodium dihydrogenphosphate):NaH2PO4(119.98).略称MSP.第一リン酸ナトリウム(primary sodium phosphate),第一リン酸ソーダともいう.リン酸に1:1のモル比で水酸化ナトリウムまたは1:2のモル比でリン酸水素二ナトリウムを加え,溶液pH を4.4~4.6にし,加熱濃縮すると得られる.水溶液41 ℃ 以下では二水和物,41~58 ℃ では一水和物,58 ℃ 以上では無水和物が得られる.無水和物は,無色単斜晶系結晶.密度2.37 g cm-3.潮解性で,200 ℃ に加熱すると水を放出し,二リン酸二水素二ナトリウムNa2H2P2O7[CAS 7758-16-9]を生成する.250 ℃ でメタリン酸ナトリウムとなる.水溶液は酸性を呈する.一水和物は,無色の斜方晶系結晶.密度2.04 g cm-3溶解度71 g/100 g 水(0 ℃).加熱すると100 ℃ で無水和物になる.二水和物は,無色の斜方晶系結晶.密度1.91 g cm-3.融点60 ℃.溶解度91.1 g/100 g 水(0 ℃).エタノールに不溶.洗剤,緩衝剤,清缶剤,細菌培養基,染色助剤,食品安定剤(指定添加物),食肉結着剤,金属表面処理剤などとして使用される.[CAS 7558-80-7:NaH2PO4][CAS 10049-21-5:NaH2PO4・H2O][CAS 13472-35-0:NaH2PO4・2H2O]【】:リン酸水素二ナトリウム[disodium hydrogenphosphate]:Na2HPO4(141.96).略称DSP.第二リン酸ナトリウム(primary sodium phosphate),第二リン酸ソーダともいう.濃リン酸に1:2のモル比で水酸化ナトリウムまたは1:1のモル比で炭酸ナトリウムを加えて pH を8.0~9.0にし,濃縮すると得られる.無水和物,二,七,八,十二水和物が知られている.35 ℃ 以下では十二水和物,35~48 ℃ では七水和物,48~95 ℃ では二水和物,95 ℃ 以上では無水和物が得られる.無水和物は,無色の潮解性粉末.密度1.70 g cm-3.溶解度1.63 g/100 g 水(0 ℃),12.14 g/100 g 水(25 ℃).加熱すると240 ℃ で二リン酸ナトリウムNa4P2O7[CAS 7722-88-5]になる.二水和物は,無色の斜方晶系結晶.密度2.066 g cm-3.融点95 ℃.十二水和物は,無色の柱状または板状斜方晶系結晶.融点48 ℃.密度1.524 g cm-3.溶解度4.3 g/100 g 水(0 ℃),76.7 g/100 g 水(30 ℃).エタノールに不溶.110 ℃ に加熱すると二水和物に,180 ℃ で無水和物になる.水溶液は弱アルカリ性を示す.清涼な辛味を有する.洗剤,緩衝剤,かん水原料,食品添加物,食肉結着剤,工業用水の処理,醸造用添加剤,染色助剤,金属表面処理剤などに使用される.[CAS 7558-79-4:Na2HPO4][CAS 10028-24-7:Na2HPO4・2H2O][CAS 7782-85-6:Na2HPO4・7H2O][CAS 67417-37-2:Na2HPO4・8H2O][CAS 10039-32-4:Na2HPO4・12H2O]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リン酸水素ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

リン酸水素ナトリウム
りんさんすいそなとりうむ
sodium hydrogenphosphate

リン酸の水素ナトリウム塩(いわゆる酸性ナトリウム塩)。次の2種類のものがある。(1)リン酸水素二ナトリウムdisodium hydrogenphosphate 第二リン酸ナトリウムともいう。化学式Na2HPO4、式量142.0。リン酸に当量の水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH8.9~9.0で濃縮すると、35℃以下で十二水和物、35.4~48.35℃で単斜晶系の七水和物、48.35~95℃で斜方晶系の二水和物、95℃以上で無水和物が得られる。無水和物は無色潮解性の粉末。240℃で分解してピロリン酸ナトリウムNa4P2O7となる。水溶液は微アルカリ性。十二水和物は風解性があり、空気中に長く放置すると二水和物となる。媒染剤、工業用洗剤、清缶剤に用いられる。薬局方でリン酸ナトリウムというときはこの化合物をさす。(2)リン酸二水素ナトリウム 第一リン酸ナトリウムともいう。化学式NaH2PO4、式量138.0。リン酸水素二ナトリウムの溶液に当量のリン酸を加え、蒸発濃縮する。また、リン酸に当量の水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムの水溶液を加え、pH4.4~4.6で蒸発濃縮すると、41℃以下で斜方晶系の二水和物が、41~58℃で斜方晶系の一水和物が、58℃以上で六方晶系の無水和物が析出する。一水和物は水100グラムに0℃で71グラム溶ける。エタノール(エチルアルコール)には不溶。酸性の洗浄剤、清缶剤、細菌培養、緩衝液の成分などに用いられる。

[鳥居泰男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android