ルフェーブル(読み)るふぇーぶる(英語表記)Georges Lefebvre

デジタル大辞泉 「ルフェーブル」の意味・読み・例文・類語

ルフェーブル(Georges Lefebvre)

[1874~1959]フランスの歴史学者。フランス革命の社会経済史的側面を実証的に研究し、多くの業績を残した。著「フランス革命」「革命的群衆」など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ルフェーブル」の意味・読み・例文・類語

ルフェーブル

  1. [ 一 ] ( Georges Lefebvre ジョルジュ━ ) フランスの歴史学者。フランドルの生まれ。フランス革命史を研究。フランス革命を貴族ブルジョア、都市民衆、農民による四つの革命の複合と見た。著に「フランス革命」「恐怖政治期の土地問題」「一七八九年の大恐怖」などがある。(一八七四‐一九五九
  2. [ 二 ] ( Henri Lefebvre アンリ━ ) フランスの哲学者。マルクス主義の立場から日常生活における疎外を具体的に指摘構造主義批判や都市空間論などを展開。著書に「日常生活批判」「都市革命」「構造主義をこえて」など。(一九〇五‐九一

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルフェーブル」の意味・わかりやすい解説

ルフェーブル(Henri Lefebvre)
るふぇーぶる
Henri Lefebvre
(1905―1991)

フランスの哲学者、社会学者。国立科学研究所員やパリ大学教授などを務めながらも実践的な思索家として、マルクス思想の教条的解釈を排する作業を軸にしてその弁証法論理の活性化を図る。日常生活を哲学者の反省の真なる対象として設定し、そこにおけるさまざまな疎外の具体相を告発しつつ、日常性の批判的認識および人間的「可能性」の復権としてのマルクス主義を構想する。1956年のハンガリー事件を一契機にスターリン主義批判を先鋭化させ、30年来参加していたフランス共産党から排除される。1960年代以降は「意味」の世代として構造主義を批判し続ける一方、都市空間論などにも斬新(ざんしん)な視点を提示した。主要著作に『日常生活批判』(1947、1962)、『都市革命』(1970)、『構造主義をこえて』(1971)などがある。

[安孫子誠男 2015年6月17日]

『H・ルフェーブル著、森本和夫訳『マルクス主義の現実的諸問題』(1958/新装版・1975・現代思潮社/オンデマンド版・2008・現代思潮新社)』『H・ルフェーブル著、白井健三郎・森本和夫訳『総和余剰、第1(哲学の危機)』新装改訂版(1970・現代思潮社/オンデマンド版・2008・現代思潮新社)』『ルフェーヴル著、森本和夫訳『現代世界における日常生活』(1970・現代思潮社)』『今井成美訳『都市革命』(1974・晶文社)』『西川長夫・中原新吾訳『構造主義をこえて』(1977・福村出版)』


ルフェーブル(Georges Lefebvre)
るふぇーぶる
Georges Lefebvre
(1874―1959)

フランスの歴史家。フランドル地方のリールに生まれる。大学卒業後各地のリセ高等中学)で教鞭(きょうべん)をとるかたわら、フランス革命の社会経済史的研究に従事し、1924年学位論文「フランス革命期のノール県の農民」を発表した。これは、革命期の農村社会構造と農民運動に初めて本格的分析を加え、農民革命概念を確立した画期的業績である。28年ストラスブール大学教授。37年からパリ大学(ソルボンヌ)教授としてフランス革命史講座を担当。また32年マチエの死後、革命史研究の中心機関であるロベスピエール研究協会の会長に就任、その機関誌『フランス革命史年報』の編集責任者となった。この間、『フランス革命』(1930)、『恐怖政治期の土地問題』(1932)、『1789年の大恐怖』(1932)、『ナポレオン』(1935)などの著書を次々に発表、さらに39年には革命150周年祭典委員会の依頼により『1789年』を執筆した。その革命観の特色は、フランス革命を単一の革命とみるのではなく、その枠内で貴族、ブルジョア、都市民衆、農民による四つの革命がそれぞれ自律的な展開を遂げたとみる複合革命論にある。また、彼以前の研究者が議会や政府レベルの史料による「上から」の革命解釈にとどまっていたのに対して、民衆運動の側に視座を据えた「下から」の革命解釈を打ちたて、フランス革命研究の新しい段階を開いた。

[服部春彦]

『高橋幸八郎・柴田三千雄・遅塚忠躬訳『1789年――フランス革命序論』(1975・岩波書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ルフェーブル」の意味・わかりやすい解説

ルフェーブル
Georges Lefebvre
生没年:1874-1959

フランスの歴史家。20世紀におけるフランス革命史研究を代表する。ベルギー国境に近いリールで,商店の雇員の家に生まれ,給費生として同地の大学を出たあと,リセ(高等中学)の教師をしながら研究を続けた。ジョレスの影響を受けて,フランス革命の社会経済的基礎を明らかにするため,故郷ノール県の農業・土地問題と農民運動とに関する史料研究を20余年も続け,1924年に学位論文《フランス革命期におけるノール県の農民》を発表して学界を驚かせた。やがてストラスブール大学の,次いでパリ大学(ソルボンヌ)の教授になり,パリ大学ではフランス革命史講座担当教授として多くの後進を育てたほか,《フランス革命史年報》の編集責任者として革命史研究の中心になった。革命の社会構造の分析とともに民衆運動の分析にも力を注ぎ,その革命観は《1789年--フランス革命序論Quatre-vingt-neuf》(1939)に要約されている。ほかに《革命的群衆》(1934)などがある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルフェーブル」の意味・わかりやすい解説

ルフェーブル
Lefebvre, Henri

[生]1905.6.16. ランド,アジェモー
[没]1991.6.28. ポー
フランスの哲学者。パリ大学で哲学を修め,1930年代にマルクス主義者となり反ファシズム運動に参加。第2次世界大戦後,国立科学研究所研究員 (1949~61) ,ストラスブール大学社会学教授 (1961~65) ,パリ大学教授 (1965~73) を歴任した。デカルトやディドロの研究もあるが,本領はマルクス主義哲学の研究にあり,思想史ばかりでなく美学,社会学の分野でも健筆をふるっている。主著『弁証法的唯物論』 Le Matérialisme dialectique (1939) ,『カール・マルクスの思想』 La Pensée de Karl Marx (1947) ,『日常生活批判』 Critique de la vie quotidienne (1958) ,『総和と余剰』 La Somme et le Reste (1959) ,『コミューン史』 La Proclamation de la Commune (1965) ,『言語と社会』 Le Langage et la société (1966) 。

ルフェーブル
Lefebvre, Georges

[生]1874.8.6. ノール,リール
[没]1959.8.28. オードセーヌ,ブーローニュビヤンクール
フランスの歴史家。フランドル,パリで教鞭をとるかたわら革命史研究に従事,1924年学位論文『フランス革命下のノール県の農民』 Les Paysans du Nord pendant la Révolution françaiseを発表。クレルモンフェラン (1924) ,ストラスブール (28) 両大学を経て 35~45年パリ大学教授。 32年「ロベスピエール研究会」の会長。主著に『フランス革命史』 La Révolution française (30) ,『89年』 Quatre-vingt-neuf (39) ,『フランス革命の研究』 Études sur la révolution française (54) があり,複合革命論を展開した。

ルフェーブル
Lefèvre (Le Fèvre), Jean

[生]1396頃.アブビル
[没]1468. ブリュージュ
フランスの年代記作者,紋章学者。サン・レミの領主で,ブルゴーニュ公フィリップのもとで「金羊毛騎士団」の長をつとめ,のちに公の顧問官となり,各地で対外交渉にあたった。「金羊毛騎士団」の創設に関する記録を中心とした 1408~36年の『年代記』 Chroniqueを著わした。

ルフェーブル
Lefèvre, Frédéric

[生]1889
[没]1949
フランスの評論家,ジャーナリスト。 1922年以後『ヌーベル・リテレール』誌の編集長として活躍。同誌に連載した『一時間対談』 Une heure avec (7巻,1924~33) のほか,『ポール・バレリーと語る』 Entretiens avec Paul Valéry (26) など。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ルフェーブル」の意味・わかりやすい解説

ルフェーブル

フランスの歴史家。パリ大学教授。ジョレスマティエの伝統を継ぎ社会史的側面からフランス革命を研究,革命の社会経済的基盤を長年の史料研究によって明らかにした。また《フランス革命史年報》責任編集者として次代の研究者に絶大な影響を与えた。主著《フランス革命期のノール県の農民》《1789年》。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android