改訂新版 世界大百科事典 「ロマニスト」の意味・わかりやすい解説
ロマニスト
Romanisten[オランダ]
16世紀ネーデルラントの画家で,イタリア(おもにローマ)に留学するなどして,自国の精緻な写実の伝統を離れ,古代彫刻と盛期ルネサンスの芸術家(ミケランジェロ,ラファエロ,後にはベネチア派も)の壮大かつ理想主義的な様式を模倣吸収しようと努めた人々。南部ネーデルラントではホッサールト,ファン・オルレイ,ロンバール,フローリス等,北部ではファン・スコレル,ファン・ヘームスケルク,モル・ファン・ダスホルスト等。従来のネーデルラント絵画に見られなかった神話主題が古代彫刻風裸体像をもって描かれるようになるのも,ロマニスト芸術の特色であり,古代風・ルネサンス風の建築背景が採用され,線的遠近法や短縮法,動的人体表現も学ばれた。しかし,ロマニストの芸術はしばしば手本の本質を理解しない形式主義や部分的特色の誇張に陥っており,末期ゴシックの伝統とイタリア・ルネサンスの出会いは,神話画,宗教画よりも,現実の対象に結びつかざるをえない肖像画においてより優れた作品を生んでいる。
執筆者:高橋 裕子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報