一電子結合
イチデンシケツゴウ
one-electron bond
二つの原子が1個の電子を共有して形成する結合をいう.水素分子イオン H2+ は,1個の電子が結合に関与している.この結合の形成は,原子軌道法によれば二つの構造ⅠとⅡの共鳴,

によるとして説明される.電子がa原子核に属している構造(Ⅰ)と,b原子核に属している構造(Ⅱ)との間の共鳴によって,系のエネルギーは安定化する.すなわち,aとbの原子核の間に結合が形成される.また分子軌道法によれば,両原子核に属する1s軌道の一次結合によってできる結合性分子軌道と反結合性分子軌道のうち,安定な前者の軌道に1個の電子が入って系のエネルギーが安定するとして説明される.H2+ は帯スペクトルによってその存在が認められており,その結合エネルギーは2.649 eV である.これは H2 分子の場合の約60% にあたる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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一電子結合 (いちでんしけつごう)
one-electron bond
1個の電子が2個の原子核A,Bによって共有されることによってAB間に生じる化学結合を指す。一電子結合の解離エネルギーは,2個の電子が対をなすことによって形成される通常の共有結合の解離エネルギーよりも小さい。一電子結合の代表例は水素分子イオンH2⁺にみられ,その解離エネルギーは水素分子H2の解離エネルギー4.27×105J/molの約60%にあたる2.55×105J/molである。
執筆者:田隅 三生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の一電子結合の言及
【化学結合】より
…そのほかに配位結合,水素結合,電荷移動相互作用など,また電気双極子や分極に基づく相互作用もある。さらにやや特殊なものとして一電子結合がある。分子がいくつかの原子核といくつかの電子から構成されているという観点に立てば,化学結合の問題は原子核‐原子核,電子‐電子,原子核‐電子の相互作用と電子および原子核の運動,さらに電子スピンなどの因子を含めて考慮することによって,原理的には統一的な理解に到達できるはずのものである。…
※「一電子結合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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