化学辞典 第2版 「三リン酸ナトリウム」の解説
三リン酸ナトリウム
サンリンサンナトリウム
sodium triphosphate
普通は,鎖状の三リン酸ナトリウムNa5P3O10と,cyclo-三リン酸ナトリウムNa3P3O9を意味するが,そのほかのP-P結合を含む三リン酸塩も知られている.【Ⅰ】三リン酸ナトリウム:Na5P3O10(367.66).Na2HPO4とNaH2PO4の2:1混合物を,540~580 ℃ に加熱するとⅠ型を生じる.これを約400 ℃ にするとⅡ型にかわり,逆にⅡ型を約470 ℃ 以上にするとⅠ型にかわる.転移温度417 ℃.Ⅰ,Ⅱ型の構造を図に示す.
無水物ではⅠ型のほうが安定である.無色の結晶.融点662 ℃.水に可溶(水溶液はアルカリ性).六水和物もあるが,風解性があり,比較的不安定である.Mg2+,Ca2+ などとも錯塩を形成しやすい.水の軟化,金属イオン封鎖剤,洗剤,食品添加物,染色の助剤,乳化剤,ボーリングなどの掘削土の流動性増加剤,医薬品の分散,可溶化剤などに用いられる.[CAS 7758-29-4]【Ⅱ】cyclo-三リン酸ナトリウム:Na3P3O9(305.89).3種類の形態があり,一番安定なⅠ型をKnorre塩ともいう.Na2HPO4とNH4NO3との混合物を約320 ℃ で長時間加熱するか,工業的には,NaH2PO4の水溶液を長時間加熱してつくる.3種類の形態があり,三,六水和物もある.構造例を図に示す.正四面体型の3個のPO4が,互いに2個のO原子を共有してつながって,3P3Oの六員環を形成する.無色の結晶.水に可溶.NaOHと反応して開環して,三リン酸塩になる.[CAS 7785-84-4]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報