上腸間膜動脈症候群

内科学 第10版の解説

上腸間膜動脈症候群(先天性胃・十二指腸疾患)

(6)上腸間膜動脈症候群(superior mesenteric artery syndrome:SMA syndrome)
病因
 上腸間膜動脈は膵臓の後方を下行した後,十二指腸水平脚の前方を走行する.この部分は椎体の前面にあたるため,十二指腸水平脚は前方を上腸間膜動脈,後方を椎体に挟まれるように走行することになる.この部分で十二指腸の通過障害をきたしたものが本症候群である.やせた女児や若い女性に多く認められ,内臓が下垂することにより上腸間膜動脈が鋭角に分岐するために,十二指腸をはさみ込むような形態に陥ると説明される.
臨床症状
 十二指腸水平脚の通過障害であるので,嘔吐,食欲不振,胃部膨満,胆汁性嘔吐,体重減少が認められる.症状には自然消退がみられ,体位により軽快することが知られている.つまり,上腸間膜動脈の圧排が取れる腹臥位や左側臥位では通過障害が軽快し,仰臥位で増悪する.
診断
 腹部単純X線写真で胃と十二指腸の拡張が認められる(double bubbleサイン).上部消化管造影では拡張した胃・十二指腸と,十二指腸水平脚が椎体を横切る部分で垂直に途切れ(cut-off sign)が認められる.この手前で消化管内容がto and froする所見がみられる.また,体位を変換し腹臥位にすると,造影剤が小腸側へ通過していくのが認められる.腹部超音波検査や,造影CT検査では腹部大動脈から上腸間膜動脈が鋭角(30°以下)に分岐するのがとらえられる.
治療
 嘔吐・脱水・栄養不良の補正をまず行う.輸液と体位による通過障害の軽減を試みる.栄養状態の改善のみで症状が経過することをしばしば経験する.外科治療はTreitz靱帯をはずして,腸管をnon-rotationの形態にする手術法と,十二指腸空腸吻合を行うバイパス手術とが用いられる.手術の予後は良好であるが,学童以降の本症では神経性食欲不振症がベースにあることが多く,原因治療も必要となる.[前田貢作]
■文献
Kimura K et al: Diamond-shaped anastomosis for duodenal atresia: an experience with 44 patients over 15 years. J Pediatr Surg, 21: 1133-1136, 1986.
日本小児外科学会学術・先進医療検討委員会:我が国の新生児外科の現況—2008年新生児外科全国集計—.日小外会誌,46: 101-114, 2010.
Tan KC, Bianchi A: Circumumbilical incision for pyloromyotomy. Br J Surg, 73: 399, 1986.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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