カナダ楯状地(読み)かなだたてじょうち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カナダ楯状地」の意味・わかりやすい解説

カナダ楯状地
かなだたてじょうち

カナダのハドソン湾を中心とする地域に分布する安定陸塊。先カンブリア時代の始生代~原生代の岩石からなり、グリーンランドなどとともにローレンシア台地の一部をなす。先カンブリア時代の基盤岩類が直接地表に露出しているので、楯状地の定義に当てはまるが、地形的には、楯を伏せたような緩やかな凸状地形とは異なって、逆に中心部が海に没している。

 カナダ楯状地は、それぞれ一つの造山帯からなるいくつかの地質区に分けられる。中心部を占めるのが始生代のスペリオル区である。主として玄武岩質火山岩からなるグリーンストーン帯堆積(たいせき)岩起源の高度変成帯がほぼ東西走向で交互に繰り返し露出する。原生代に入ると、大局的にみれば中心部を取り巻くように、その外側に造山帯が形成されており、大陸成長説の根拠とされている。原生代前期の地質区は、いずれも始生代の変成岩や花崗(かこう)岩が約16億年前のハドソン造山運動を受けたものである。この時期の地層中には大規模な縞(しま)状鉄鉱層が存在しており、良好な鉄鉱床として稼行されている。原生代中期の地質区はスペリオル区の南東に位置し、基盤の大部分は約10億年前のグレンビル造山運動によって再変動を受けたもので、巨大なアノーソサイト岩体が存在する。

岩松 暉 2016年2月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カナダ楯状地」の意味・わかりやすい解説

カナダ楯状地
カナダたてじょうち
Canadian Shield

カナダ東部,ハドソン湾を中核にして広がる地質上の地域。その形成の地質年代からローレンシア高地 (台地) とも呼ばれる。セントローレンス湾から五大湖,ウィニペグ湖アサバスカ湖,グレートスレーブ湖,グレートベア湖を結ぶ線の内側にあり,北極海側ではバフィン島ブーシア半島が含まれる。カナダ総面積の約半分を占めるこの地域は,古期の造山運動による褶曲帯が浸食を受けて準平原化したもので,大部分が標高 700m以下の平坦な地形となっている。しかし,氷期に強い氷食作用を受けたため,岩石が露出している地帯や湖沼モレーンの堆積地が広く,北極海側ではフィヨルドもみられる。土壌の発達が悪く農業生産には適さず,森林でおおわれている部分が多い。また,先カンブリア時代の岩石から成るため鉱物資源が豊富で,オンタリオ州を中心に,カナダの主要鉱山は,ほぼこの楯状地の外縁部に立地する。無数の氷河湖や急流,早瀬の多い河川は,水力発電に利用されている。

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