明治・大正期の雑誌編集者。本名哲太郎。明治15年6月28日秋田県生まれ。第二高等学校から東京帝国大学英文科に入学。在学中から『中央公論』の「海外新潮」欄に海外雑誌などの翻訳を掲載する仕事をしていた。1904年(明治37)9月東京帝大法科に転科したが、10月に中退、中央公論社の社員となる。以来病没するまで『中央公論』の編集者として、同誌を指導的総合雑誌につくりあげた。1912年(大正1)9月主幹に就任。まず滝田は文芸欄に小説を載せることを提案し、泉鏡花(きょうか)、田山花袋(かたい)、国木田独歩(くにきだどっぽ)らの作家を次々と起用した。これによって『中央公論』文芸欄は小説家の檜(ひのき)舞台と評価されるまでになった。また論説では、東京帝大法科の吉野作造をはじめ新しい論客を発掘し、論壇に新風を吹き込んだ。とくに民本主義論者に多く執筆機会を提供し、『中央公論』は大正デモクラシーの中心の一つとなった。滝田によって日本の総合雑誌の型がつくられたといっても過言ではない。大正14年10月27日死去。
[有山輝雄]
『中央公論社編・刊『中央公論社の八十年』(1965)』▽『杉森久英著『滝田樗陰』(中公新書)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
明治末・大正期の編集者。本名哲太郎。秋田県に生まれる。1903年東京帝国大学英文学科に入学。在学中から《中央公論》の海外新潮欄の翻訳者として同誌に関係するようになり,04年法科に転じたがそのまま編集者として入社,大学は中退した。12-25年同誌の主幹として活躍,その間,民本主義を主唱する吉野作造や大山郁夫,美濃部達吉などの学究を論壇に登場させ,他方,文芸欄の充実に力をそそぎ,夏目漱石,森鷗外,島崎藤村,志賀直哉,広津和郎,谷崎潤一郎等の話題作を次々と掲載するなどして《中央公論》を発行部数10万を超す権威ある総合雑誌に育てあげた。談論風発,精力的な樗陰は,人力車で筆者の間を駆けめぐり,多くの作家が門前に彼の車の停まるのを待ち望んだといわれる。中間読物の分野にも有能な筆者を育成し,総合雑誌として一つの典型的なスタイルを作りあげた樗陰は,1919年4月に創刊された《改造》との激しい競合のなかで25年病没した。
執筆者:海老原 光義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
明治・大正期の編集者
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報
(井川充雄)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
…桂太郎内閣と元老山県有朋の軍備優先・民生無視の政策態度に対して,《時事新報》《朝日新聞》《万朝報》などの記者たちは,実業界代表とともに憲政擁護運動を展開し,桂内閣の退陣を実現して軍備拡張予算を一時的には食いとめた。この運動のさなかに雑誌《中央公論》は吉野作造の民本主義論を掲載し,編集長滝田樗陰はやがて新文学の旗手たちをもそだて,日本ファシズムに対する言論の最強力な対立者へと同誌が充実する素地をつくった。また,石橋湛山が《東洋経済新報》において反戦自由主義経済論をつらぬくにいたる契機も,この運動にあった。…
…この雑誌は92年《反省雑誌》となり,99年《中央公論》と改題され,発行所は反省社,1914年中央公論社となった。《中央公論》の地位を確立した功労者は滝田樗陰(ちよいん)(1882‐1925)である。樗陰はまず文芸欄を拡充し,明治末期から大正期にかけて谷崎潤一郎,志賀直哉,芥川竜之介ら新進作家を数多く登場させ,〈文壇の登竜門〉としての権威を築いた。…
… 編集という仕事が職業として独立するのは日本では歴史的には明治以降,近代的な出版が成立して以後のことである。なかでも《中央公論》の主幹を勤めた滝田樗陰(1882‐1925)などは独立した〈編集者の先駆者〉といえる。これに対して江戸時代では,著作家と編集者はまだあまり分離されておらず,滝沢馬琴などは,自分の著作の挿絵にどんなものが適切かをみずから画工に指示したりしている。…
※「滝田樗陰」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加