中性子捕獲(読み)チュウセイシホカク

デジタル大辞泉 「中性子捕獲」の意味・読み・例文・類語

ちゅうせいし‐ほかく〔‐ホクワク〕【中性子捕獲】

原子核に1個または複数個の中性子が吸収されて、より重い原子核になる核反応捕獲によってγ線光子)が放出される。恒星内部の核反応で重要な役割を担い、重元素生成に大きく寄与する。放射性捕獲の一。

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化学辞典 第2版 「中性子捕獲」の解説

中性子捕獲
チュウセイシホカク
neutron capture

原子核AX に中性子nが入射して起こる中性子反応のうち,X + nの系がγ線を放出してエネルギーを失うため,中性子が出られなくなり,質量数が一つ増えたXの同位元素 A+1X ができる反応.たとえば,59Co(n,γ)60Co反応のように生成核 A+1X が放射性をもつことが多く,原子炉における放射性同位元素製造の重要な反応である.もっとも簡単な核,陽子に対する捕獲反応p(n,γ)2Hは,熱中性子に対し0.3 barn の断面積をもち,原子核物理のもっとも基本的な反応の一つであるとともに,原子炉のなかでは中性子束を減らす望ましくないはたらきをする.古典論では,ある粒子系から電磁波が放射されるには,粒子体系の振動運動がなければならなかったように,X + n系がγ線を放出するには,その系がかなりの寿命で持続されなければならず,複合核ができることがその条件をみたす.したがって,核共鳴の現象に伴った捕獲の場合,断面積が大きくなることが期待できる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中性子捕獲」の意味・わかりやすい解説

中性子捕獲
ちゅうせいしほかく
neutron capture

中性子吸収ともいう。原子核が中性子1個を吸収して中性子数が1つ多い同位体になる核反応。生成した核が放射性をもつことが多いので,原子炉の中などで放射性同位元素を多量に製造するのに利用される。中性子は電荷をもたないので原子核に近づきやすく,反応断面積は中性子の速度に逆比例する。すなわち遅い中性子ほど反応を起しやすいという特徴がある。共鳴的に捕獲される現象もしばしば起り,原子核反応のなかで最も断面積が大きい。

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改訂新版 世界大百科事典 「中性子捕獲」の意味・わかりやすい解説

中性子捕獲 (ちゅうせいしほかく)

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世界大百科事典(旧版)内の中性子捕獲の言及

【原子炉】より

…原子炉ではウラン235 235U,ウラン233 233U,プルトニウム239 239Puなどの核分裂性核種が使用される。これらは中性子を吸収すると単にγ線を放出するのみのこともあるが(これを中性子捕獲反応という),多くの場合,核分裂を起こす。核分裂によってできた二つの原子核を核分裂片(核分裂生成物)と呼ぶ。…

【放射性捕獲】より

…他の核反応におけると同様に,大別して三つの反応過程を通して起こる。例えば中性子の放射性捕獲(単に中性子捕獲neutron captureともいう)A(n,γ)Bの場合,(1)入射中性子nが標的核Aのまわりの束縛軌道に入って残留核Bを形成すると同時にγ線を放出する直接捕獲,(2)nがAに捕獲されて比較的簡単な複合系をつくった後,その複合系がγ線を放出して最終状態になる半直接捕獲,(3)nがAと一体になって複合核を形成し,その複合核がγ線を放出して最終状態になる複合核捕獲の三つである。第3の過程では,入射中性子のエネルギーが複合核状態のエネルギーにほぼ等しいときだけ複合核がつくられ,大きな確率で中性子捕獲が起こる。…

※「中性子捕獲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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