乙(漢字)

普及版 字通 「乙(漢字)」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 1画

[字音] オツ・イツ
[字訓] まがる・きのと・おとる

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
獣骨の象。〔説文十四下に「春、艸木曲して出づ。气(陰気ほ彊(つよ)く、其の出づること乙乙たるに象るなり。(こん)とを同じうす。乙は甲を承けて人頸に象る」とするが、文意に一貫性を欠く。〔爾雅、釈魚〕に「魚腸、之れを乙と謂ふ」とし、魚尾を丙、魚枕(頭骨)を丁とするが、魚とは関係がない。乙は獣骨で作った骨べらの象である。亂(乱)は(らん)(乱れた糸)を乙で解くので、これを乙治という。

[訓義]
1. まがる、へらの形。
2. 甲乙は五行の木。木の兄(え)(甲)、木の弟(と)(乙)という。きのと。
3. 十干において、甲に次ぐ。おとる。
4. 名の代わりに、某を甲・乙のようにいう。なにがし。
5. に通じ、乙鳥(燕)、つばめ。
6. 軋に通じ、きしる。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕乙 キノト・ヲハル

[部首]
〔説文〕に乾・亂・尤の三字を属する。乾は旗桿の吹き流しの形、尤は祟(たたり)をなす呪霊をもつ獣の象形。ともに乙の形義と関係はない。亂は骨べらで乱れた糸を解く形。

[声系]
〔説文〕に乙声として(やく)・失・を収め、また・失の声系字を収めるが、の乙は軛(やく)(くびき)の象形、失はエクスタシー状態にある巫女の象形である。(軋)は擬声語

[語系]
乙・eat、燕ianは声近く通用する。燕を乙というのは斉人の語。

[熟語]
乙乙乙科・乙正乙選・乙第・乙鳥乙部乙榜乙夜・乙覧
[下接語]
魚乙・甲乙・天乙・不乙・鳧乙・風乙

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報