改訂新版 世界大百科事典 「乾飯」の意味・わかりやすい解説
乾飯 (ほしいい)
干した飯の意で,〈ほしい〉〈かれいい,かれい(餉)〉ともいい,糒とも書く。米を蒸して乾燥したもので,湯や水にひたし,あるいはそのまま食べた。貯蔵性が高いうえに簡単に食べられるので,古くから旅行用,軍事用の携行食として重視され,不動倉に備蓄されることもあった。《伊勢物語》の東下りの段には〈乾飯(かれいい)のうへに涙おとしてほとびにけり〉とある。江戸時代には道明寺(どうみようじ)糒が,仙台の糒とともにその良質をうたわれ,道明寺は糒の同義語にもなった。現在ではもち米を原料とする糒を挽(ひ)き割ったものを道明寺種(だね),道明寺粉といい,つばき餅,桜餅などの和菓子の材料とする。料理では,白身の魚の上にのせて蒸す道明寺蒸し,衣にして揚げる道明寺揚げがある。
執筆者:松本 仲子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報