不動倉(読み)フドウソウ

デジタル大辞泉 「不動倉」の意味・読み・例文・類語

ふどう‐そう〔‐サウ〕【不動倉】

奈良・平安初期、不動穀を貯蔵するために諸国に設けた倉。開倉には太政官許可を必要とした。ふどうのくら

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精選版 日本国語大辞典 「不動倉」の意味・読み・例文・類語

ふどう‐そう‥サウ【不動倉】

  1. 〘 名詞 〙 不動穀を納めた倉。国司が鍵を保管し、開倉には太政官の許可を必要とした。ふどうのくら。
    1. [初出の実例]「所以不不動倉鎰者、依今年国裏疫病、不不動穀」(出典正倉院文書‐天平九年(737)長門国正税帳)

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改訂新版 世界大百科事典 「不動倉」の意味・わかりやすい解説

不動倉 (ふどうそう)

奈良・平安時代において非常時にそなえて穀物を備蓄した倉庫。708年(和銅1),諸国の穀の一部を不動倉を設けて備蓄するようにという政府の指示によって制度化された。管理には国司があたったが,鍵は原則として中央で保管され,倉の開閉には太政官の許可を必要とした。貯蔵状態の検査も正倉のなかではもっとも厳しく行われた。不動倉の数や備蓄量は国によって差が大きいが,天平期の史料では正倉の2,3割を不動倉がしめる例が比較的多く,備蓄量はかなりの国で正税全体の半分以上に達していた。諸国の財源である正税のうち穀を貯蔵した倉に不動倉と動用倉があるが,通常の支出は動用倉の穀でまかなわれ,不動倉は納入完了の後は国司交替時の確認や検査のとき以外はほとんど開かれなかった。そのため長期間貯蔵されたままの穀が多く,腐敗して役に立たないものが少なくなかった。8世紀後半以降,律令制弛緩にともない中央へ調庸物が集まりにくくなり,政府が諸国の穀を中央に吸収する政策をとるようになると,正税穀の不足から不動穀まで支出する国がふえ,平安時代に入ると不動倉の制度も衰退していった。
正倉
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「不動倉」の意味・わかりやすい解説

不動倉
ふどうそう

律令(りつりょう)時代に、諸国の財政の基本的な原資であった正税(しょうぜい)は、不動穀・動用穀・出挙(すいこ)稲の3種に分類されたが、このうち不動穀を収納する倉を不動倉という。708年(和銅1)成立。不動穀は将来の非常の際の支出に備えたもので、その倉は1郡に1個の割でつくられ、鍵(かぎ)は中央政府で保管する原則であった。730年代の諸国の正税帳から算出すると、全正税に対する不動穀の比率は、国郡ごとに異なるが単純平均で54%弱の高率であった。740年(天平12)には穀の腐敗などの理由で不動倉が開かれて一般の支出に転用され、このときから鍵は国司の保管となったらしいが、763年(天平宝字7)ふたたび中央政府保管に戻った。

[虎尾俊哉]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「不動倉」の意味・わかりやすい解説

不動倉
ふどうそう

和銅1 (708) 年諸国に設置された非常用の穀物貯蔵庫。保管は国司。開倉は太政官の許可を要した。平安時代中期以降崩壊。

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世界大百科事典(旧版)内の不動倉の言及

【飢饉】より

…各国にあって備荒のみを目的とする貯穀としては,大宝令によって,戸の貧富に応じてアワなどの穀物を規定量徴収するように定められた義倉や,759年(天平宝字3)諸国の運脚(調・庸を都まで徒歩で運ぶ人夫)の飢えをいやすために諸国に設置された常平倉(じようへいそう)の制などがあったが,その機能する範囲は小さく,むしろ各国の財源たる正税の方が一般的に機能した。正税を蓄える正倉には,平常の公出挙などに用いる動倉と非常用の不動倉があり,後者は国郡司が被害実態を申告して,太政官の命によって開く定めであった。飢饉がはなはだしくその国の正税ではかなわないときは,隣国の正税を転用したこともある。…

※「不動倉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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