先進国が途上国の温暖化対策を支援し、温暖化ガスの削減成果を両国で分け合う制度。英語の頭文字からJCMと略称する。優れた先進国の低炭素技術、インフラ技術、省エネサービスなどを先進国の援助で途上国に導入・普及し、途上国での二酸化炭素(CO2)排出量の削減分(炭素クレジット)を第三者機関が認定し、先進国と途上国の排出削減目標に計上する二国間協定である。日本政府が2011年(平成23)に提唱した概念で、日本独自の排出権取引の仕組みといえる。一般に先進的な低炭素技術の導入にはコストがかかるため、途上国は導入に二の足を踏みがちである。二国間クレジット制度を活用すれば、途上国は低コストで温暖化対策を進められ、日本企業にとっても政府の補助金などを活用して先進技術を途上国へ輸出・普及できる利点がある。日本政府は2019年(令和1)6月末までに、モンゴル、バングラデシュ、エチオピア、ケニア、モルジブ、ベトナム、ラオス、インドネシア、コスタリカ、パラオ、カンボジア、メキシコ、サウジアラビア、チリ、ミャンマー、タイ、フィリピンの17か国政府と二国間クレジット制度で合意。2020年10月時点で、太陽光・小水力・バイオマス発電、省エネ・高効率機器、コ・ジェネレーションシステムなど172件のプロジェクトを実施している。
二国間クレジット制度の類似の仕組みとして、先進国と途上国が温暖化対策に多国間で協力して削減分(炭素クレジット)を分け合うクリーン開発メカニズム(CDM)がある。CDMは京都議定書で定められた排出権取引制度であるが、対象プロジェクトの範囲が限られるうえ、関係国間の調整や削減量測定に時間やコストがかかる難点があった。二国間クレジット制度はクリーン開発メカニズムよりも柔軟に効率よく温暖化対策を進められる利点がある。一方で、環境NGOなどからは、途上国の削減分を先進国の削減分に加味しても、本質的な解決にはならない、と批判されている。
[矢野 武 2021年1月21日]
《〈和〉doctor+yellow》新幹線の区間を走行しながら線路状態などを点検する車両。監視カメラやレーザー式センサーを備え、時速250キロ以上で走行することができる。名称は、車体が黄色(イエロー)...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新