二硫酸 (にりゅうさん)
disulfuric acid
化学式H2S2O7。ピロ硫酸pyrosulfuric acidともいう。硫酸H2SO4に三酸化硫黄SO3を溶かしたものが発煙硫酸(オレウムoleumともいう)であるが,H2SO4とSO3とを等モル混ぜた場合に二硫酸となる。三酸化硫黄の含量が18.35~61.87%の発煙硫酸を0℃以下に冷却すると,無色透明で吸湿性の結晶として得られる。比重1.9(20℃),融点35℃であるが,加熱するとSO3を放出して分解する。水と激しく反応し発熱する。酸化剤,脱水剤,スルホン化剤として用いられる。
一般式MI2S2O7で示される多くの二硫酸塩(ピロ硫酸塩)が知られている。2molの硫酸水素塩から1molの水がとれた形をしていて,金属硫酸塩と三酸化硫黄を反応させるか,アルカリ金属の塩の場合は硫酸水素塩を加熱脱水すると得られる。多く吸湿性で,水溶液中で二硫酸イオンは硫酸水素イオンHSO4⁻に変わる。
S2O72⁻+H2O─→2HSO4⁻
アルカリ金属の塩は強熱すれば三酸化硫黄を発生して分解し硫酸塩となる。難溶性金属酸化物を硫酸水素カリウム(またはナトリウム塩)と混ぜ,るつぼ中で熱して融解すると,はじめ二硫酸カリウムを生じ,ついで反応性の強い三酸化硫黄を発生して,金属酸化物と反応し以後の化学操作の容易な可溶性の金属硫酸塩に変えることができる。これは二硫酸塩融解法と呼ばれ,分析化学において広く用いられている。
執筆者:漆山 秋雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
二硫酸(塩)
ニリュウサンエン
disulfuric acid(disulfate)
二硫酸(塩)は学術用語.正式な酸命名法のμ-オキソ-ヘキサオキソ二硫酸の略名.ピロ硫酸(塩)(pyrosulfuric acid, pyrosulfate)ともいう.
酸:H2S2O7(178.14).発煙硫酸を0 ℃ 以下に冷却するか,硫酸に計算量のSO3を加えると得られる.無色の結晶.市販品は微黄色のものもある.密度1.89 g cm-3.融点35 ℃.空気中で発煙する.潮解性で,水を加えると音を発して発熱し,硫酸になる.スルホン化剤,酸化剤などに用いられる.[CAS 7783-905-3]
塩:MⅠ2S2O7.アルカリ金属,アルカリ土類金属,NH4などの塩が得られている.MHSO4の加熱,M2SO4と熱濃硫酸との反応,Mの正塩と計算量のSO3の反応などで得られる.[O3S-O-SO3]2- を含む.イオンは,2個の四面体型のSO4が1個のO原子を共有して結合した形.S-O約1.44 Å(末端),1.64 Å(架橋).∠O-S-O約104°(四面体内),∠S-O-S約124°.多くは吸湿性である.水に易溶.水溶液中では,
S2O72- + H2O → 2HSO4-
のように分解する.アルカリ金属塩は加熱するとSO3を放出して硫酸塩になるが,Ag塩は加熱溶融できる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
二硫酸
にりゅうさん
pyrosulfuric acid; disulfuric acid
化学式 H2S2O7 。ピロ硫酸ともいう。無色あるいは淡黄色の吸湿性の強い結晶。空気中で激しく発煙する。比重 1.98,融点 35℃。激しい音をたてて水に溶け,同時に多量の熱を発生する。密栓して保存し,取扱いには慎重を要する。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の二硫酸の言及
【硫酸】より
… 2H2SO4⇄H2S2O7+H2O H2SO4+H2O⇄H3O++HSO4- H2SO4+H2S2O7⇄H3SO4++HS2O7- 2H2SO4⇄H3SO4++HSO4-最後の式に示す自己解離の平衡は大きく左に偏っている。濃硫酸に三酸化硫黄を溶かし込んだものは発煙硫酸と呼ばれ,当モルの混合物とした場合の主成分は二硫酸H2S2O7である。硫酸は強い二塩基酸であり希硫酸(希水溶液)中では第1段の解離はほとんど完全であり第2段の解離定数はK2=2×10-2(18℃)である。…
※「二硫酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」