五重相伝(読み)ゴジュウソウデン

デジタル大辞泉 「五重相伝」の意味・読み・例文・類語

ごじゅう‐そうでん〔ゴヂユウサウデン〕【五重相伝】

浄土宗鎮西派で、宗義秘奥を相伝する儀式法然の往生記、弁阿の末代念仏授手印、然阿良忠の領解末代念仏授手印しょうおよび決答授手印疑問鈔、玄忠曇鸞どんらんの凝思十念の五つを師が口授する。

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精選版 日本国語大辞典 「五重相伝」の意味・読み・例文・類語

ごじゅう‐そうでんゴヂュウサウデン【五重相伝】

  1. 〘 名詞 〙 仏語。
  2. 浄土宗鎮西派および西山派で、宗義を受けた証として行なう信仰上の儀式。往生記、授手印、領解抄、決答疑問抄、凝思十念の法の五によって宗義を伝え、五通の血脈を師より口ずから相伝されるもので、伝通院の開山で鎮西派の第七祖了誉聖冏から始まる。五重血脈(ごじゅうけちみゃく)。五重。
    1. [初出の実例]「あらたなる夢想によりて、この浄土宗をひらき給へり。一心金剛の円頓戒をつたへ、五重さうでんの大乗血脈をつぎたまふ」(出典:仮名草子・東海道名所記(1659‐61頃)六)
  3. 秘伝。奥伝。
    1. [初出の実例]「女郎買五重相伝(ゴヂウサウデン)一重紙子」(出典浮世草子傾城禁短気(1711)六)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五重相伝」の意味・わかりやすい解説

五重相伝
ごじゅうそうでん

浄土宗鎮西派において,宗義の奥義を相伝する場合に五重の次第をもってすること。初重に,法然著と伝えられる『往生記』 (1巻) によって宗義を伝え,二重に,弁阿の『末代念仏授手印』 (1巻) を,三重に,然阿良忠の『領解末代念仏授手印鈔』 (1巻) を,四重に,同著『決答授手印疑問鈔』 (2巻) を,五重に,玄忠曇鸞大師所伝の凝思十念の法を口授伝心する。

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世界大百科事典(旧版)内の五重相伝の言及

【聖冏】より

…学業なるや瓜連に帰り,1378年(天授4∥永和4)了実から法脈を相承,ついで常福寺に住した。当時,浄土宗が他宗から独立した宗派とみられていなかったことを嘆き,述作,講学に努め,また宗義の相承に五重相伝の法を定め,伝法制度を確立した。1415年(応永22)弟子聖聡の請により江戸小石川に移って小庵を結び,この地で没した。…

【浄土宗】より

… 室町時代に入って,名越派は北関東から東北に,藤田派もまた東北に勢力をのばし,白旗派は関東を地盤としていた。白旗派の聖冏(しようげい)は,浄土宗が独立した宗派と認められていない状況を遺憾として,浄土宗に宗脈・戒脈の相承があることを明かし,五重相伝の法を定め,浄土宗の僧侶となるには必ず宗戒両脈を相伝しなければならぬと規定した。この伝法制度により,僧侶資格を同一形式で統一することができ,独立教団として発展していく基礎が固まった。…

【伝法】より

…各宗ともに伝法儀式において,僧侶の伝法に俗人を結縁させることがあるのは,日本仏教の特色である。浄土教系の宗派では融通念仏宗に伝法があり,これに準じた浄土宗の伝法を五重相伝といっている。浄土宗ではこれに加行を課する。…

※「五重相伝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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