人種形成
じんしゅけいせい
人類という単一種において,自然環境および遺伝学的諸過程の影響により,人種が形成されていくこと。従来,人種は固定的なものであり,突然変異によってのみ変化もしくは進化していくものと考えられていたが,最近の人類学では,人種は現在も形成されつつあると考えられるようになった。一つの人種は似た者同士の集団であるが,ほかの人種と混血が進むと,そこに新しい人種が形成される。今日の北アメリカの黒人や,ネオ・ハワイ人などがその例である。また新しい環境に移住すると,一定の年月のうちには,集団内の突然変異の影響を受け,また淘汰作用に基づいて,それぞれの環境に適した多数の個体が出現し,新しい人種が形成される。このようにして過去の歴史において,熱帯の強烈な日光下ではそれに適した色素沈着の強い体表をもつニグロイドが生じ,一方,日光の弱いヨーロッパの高緯度地帯では皮膚が白く,虹彩の明るい,金髪の北欧人が出現したと考えられている。また,典型的モンゴロイドの平面的な顔は,アジア大陸内部の乾燥した酷寒の環境に対する適応の結果つくられたと考えられる。小集団が分散して隔離される場合も,遺伝子浮動の作用を受け,もとの母人種とはかなり身性を異にする人種集団が生じる。今後は,文明の影響を受けて新しい人種が形成される可能性も考えられる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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