翻訳|iris
眼の水晶体の周囲を包む膜で,眼球正面から角膜を通してみえる部分。目の色はこれによる。色素を含み,日本人の場合,茶褐色であるため,茶目とも呼ばれる。虹彩は,虹彩表面,虹彩実質,虹彩色素上皮からなる。虹彩表面には通常多数のひだがあり,紋理という。虹彩実質は粗な結合組織の網目で,中に血管と色素細胞が埋まっている。虹彩色素上皮は外胚葉由来のもので,元来は2層だが,前層は瞳孔散大筋に分化し,後層だけにみえる。虹彩に接してすぐ奥には水晶体がある。また,虹彩のほぼ中央には瞳孔という小孔があって,外界の光を眼内へ導く。虹彩は,中に分布する瞳孔括約筋と瞳孔散大筋の働きで瞳孔の径を調節することによって,眼内へ入る光量を加減し,眼底像を明りょう化する。瞳孔の径は,明るさに応じて変化するほか,輻輳(ふくそう)(両眼の視線を内に寄せること),睡眠,薬物投与,神経麻痺などで変化し,また年齢によっても変わる。虹彩は血管の豊富な組織であり,各種炎症の場となりやすい。
→眼
執筆者:小林 義治
いわゆる目の色のことで,虹彩色調ともいう。この色は,虹彩表面・実質,色素上皮のそれぞれに含まれるメラニン色素顆粒の量と色調によって決まる。黒人やメラネシア人の色素は黒く,インド人,蒙古人種,マレー人はやや淡い褐色から黄色,ヨーロッパ人は緑色から黄褐色の種々の色調を示す。黒人や蒙古人種では色調の個人差はきわめて少ないが,ヨーロッパ人では身体の色素の減少とともに虹彩色も変化する。これは,前者では虹彩表面の色素が多く,後者では虹彩実質が直接みえているため,実質の色素がやや多ければ青色に,少なければ灰色にみえるからである。淡色の虹彩は脱色素の過程で成立し,毛髪や皮膚が淡色の住民に限って出現する。また,白子の場合は,虹彩全層に色素が欠如し,血管がみえるので赤色を呈する。
虹彩色は成人になるにしたがって退色する。日本人では,幼児期では濃褐色の出現率が高く,青年期では褐色が50%前後となり,老年期では灰色が多くなる。一般に女子の色調は男子より暗い。これは,女子における年齢的な色調退色が男子よりおくれて発現するからである。色調の遺伝性を認める学者があり,褐色は青色より優性に遺伝するといわれる。虹彩に色素性母斑が出現することがあるが(日本人1.88%),年齢とともに多発するので,老人性現象とみなしうる。
執筆者:欠田 早苗
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目のぶどう膜の最前部に位置する膜様組織で、色素と血管に富み、色素の量によって虹彩の色が異なる。虹彩の瞳孔(どうこう)を囲む部分は瞳孔縁といい、虹彩の外縁は毛様体に移行する。毛様体は前方からは見えない。瞳孔の後方は水晶体と軽く接し、ここを通って後房水(こうぼうすい)は前房へ流れ、さらに隅角(ぐうかく)を経て眼外に流れ去る。虹彩には瞳孔を小さくする瞳孔括約筋と、瞳孔を大きくする瞳孔散大筋とがあって瞳孔の大きさを調節している。
[小暮美津子]
…眼球をつくる膜のひとつ。外側の強角膜(角膜と強膜を総称していう)と内側の網膜の間にあり,前部ぶどう膜の虹彩iris,毛様体ciliary bodyと,後部ぶどう膜の脈絡膜choroidとに分けられる。血管に富む組織で眼内の栄養や代謝をつかさどるが,虹彩や毛様体はさらに分布する筋肉(眼筋のうちの内眼筋)の作用によって,瞳孔を広げたり縮めたりする対光反応や調節にも関与する。…
…体毛は直毛の人種に少なく,波状毛に多く,曲毛ではまちまちである。絞りの役をする目の虹彩の色は,皮色との相関が高い。虹彩の色素量は淘汰と深い関係があったと思われる。…
…眼球をつくる膜のひとつ。外側の強角膜(角膜と強膜を総称していう)と内側の網膜の間にあり,前部ぶどう膜の虹彩iris,毛様体ciliary bodyと,後部ぶどう膜の脈絡膜choroidとに分けられる。血管に富む組織で眼内の栄養や代謝をつかさどるが,虹彩や毛様体はさらに分布する筋肉(眼筋のうちの内眼筋)の作用によって,瞳孔を広げたり縮めたりする対光反応や調節にも関与する。…
…また脈絡膜の前縁は小さなひだ状の毛様体となり,透明な繊維でできたチン小体を介して水晶体に連なる。一方,毛様体から水晶体の前方に虹彩(こうさい)がのび,瞳孔(どうこう)が形成される。網膜には視細胞やその他の神経要素があり,視覚情報処理の一部がここで行われる。…
※「虹彩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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