国指定史跡ガイド 「今市大念寺古墳」の解説
いまいちだいねんじこふん【今市大念寺古墳】
島根県出雲(いずも)市今市町にある古墳。斐伊(ひい)川と神戸(かんど)川とに挟まれた地域に位置し、現在の大念寺境内の裏山、出雲平野を一望のもとに見渡すところに築造されている。全長約100m、後円部の径約42m、高さ約6m、出雲地方で最大規模の前方後円墳である。内部構造は奥行き13mに及ぶ割り石造りの壮大な横穴式石室である。両袖式の複式構造で、石室は玄室、前室、羨道(せんどう)から構成され、玄室には巨大な刳(く)り抜き式の家形石棺が置いてあり、これは全国最大級のものである。また、前室にも組み合わせ式の石棺(基底部のみ現存)がある。この古墳の発見は1826年(文政9)で、当時の記録によれば、全国的にも珍しい金銅製履(くつ)、大刀(たち)、槍、斧、馬具、土器などが出土したとあり、その一部が大念寺に保管されている。古墳は6世紀後半に属すると推定される。巨石を使用した石室や大型の石棺および豊富な副葬品など、出雲地方で強大な勢力をもった人物の墓と考えられ、1924年(大正13)に国の史跡に指定された。墳丘は版築というきわめて進んだ工法でつくられており、版築は7世紀ごろ畿内(きない)の古墳や寺院の建立に用いられているが、この工法が6世紀の今市大念寺古墳に採用されていることで、古代出雲文化の水準の高さが改めて注目されている。近くに西谷墳墓群、上塩冶(かみえんや)築山古墳などがある。JR山陰本線出雲市駅から徒歩約7分。