警察署に付設された逮捕留置のための「留置施設」が、法務省所管の刑事施設に代用される場合、これを「代用刑事施設」とよぶ。1908年(明治41)に制定され2007年(平成19)に廃止された監獄法は、留置場を監獄として使用できる(代用監獄制度)と規定していたため、とりわけ勾留(こうりゅう)処分により法務省所管の監獄(拘置所)に収容されるべき被疑者の大半が、警察所管の留置場に収容されるという現実があった。これに対しては、被疑者の取調べを担当する警察が、同時に拘禁される被疑者の処遇を担当することにより、自白を誘導する可能性があり、冤罪(えんざい)につながるとの批判からその廃止を求める声があった。このため、法務省は、監獄法改正の際にこの反対論に配慮し、受刑者の処遇に関する法律改正を先行させ、その後未決拘禁者等の処遇に関する法律改正に着手した(詳細は「監獄法」の項参照)。「代用監獄制度」については賛否両論があったものの、結局、刑事収容施設法は当制度を認めた(同法15条)。ただし、同法は「監獄」という語を改め「刑事施設」としたため、現在は「代用刑事施設」とよばれる。この代用刑事施設の1日平均収容人員は、2008年度では1万1070人であった(法務省矯正局の資料による)。
[石川正興]
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