刑事収容施設法(読み)ケイジシュウヨウシセツホウ

デジタル大辞泉 「刑事収容施設法」の意味・読み・例文・類語

けいじしゅうようしせつ‐ほう〔ケイジシウヨウシセツハフ〕【刑事収容施設法】

《「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」の略称刑事収容施設刑務所拘置所などの刑事施設、および留置施設)の管理運営と被収容者・被留置者の処遇について規定した法律。旧監獄法を抜本的に改正し、平成18年(2006)から施行された。刑事施設法。刑事施設・受刑者処遇法刑事被収容者処遇法
[補説]監獄法の受刑者の処遇に関する規定を改正する法律として、平成17年(2005)に「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」の名称で制定され、翌年施行された。平成19年(2007)の改正により、未決拘禁者・死刑確定者の処遇に関する規定も同法に統合され、現名称に変更。これに伴い監獄法は廃止された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「刑事収容施設法」の意味・わかりやすい解説

刑事収容施設法
けいじしゅうようしせつほう

刑事収容施設の管理運営と被収容者等の処遇について規定した法律。正式名称は「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(平成17年法律第50号)。前身は1908年に制定された「監獄法」(明治41年法律第28号)。制定時は「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律(受刑者処遇法)」という名称で、旧監獄法のうち「受刑者の処遇に関する規定」の部分を改正した(2005年5月18日成立、2006年5月24日施行)。未決拘禁者・死刑確定者の処遇については旧監獄法の題名を改めた「刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律」(2006年5月24日改題)に規定されていたが、受刑者処遇法による受刑者の処遇との間に不合理な法律上の格差があったため、2006年5月25日「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律」が成立。改められた未決拘禁者・死刑確定者についての規定は受刑者処遇法に統合され、受刑者処遇法の題名も現在の名称に変更された(2007年6月1日施行。刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律は廃止)。

[石川正興]

法の目的

1908年(明治41)に制定された監獄法は、約1世紀ぶりに全面的に改められ、本法となったわけであるが、刑事収容施設法の規制対象としての施設は、監獄法が規制対象とした監獄に該当する「刑事施設」だけではない。法律の題名に表現されるように、「刑事収容施設」である。刑事収容施設には「刑事施設」のほかに、都道府県警察所管の「留置施設」と海上保安庁所管の「海上保安留置施設」が含まれる。つまり、刑事収容施設法はこれら三つの施設を規制対象とし、これら施設の適正な管理運営を図るとともに、刑事施設に収容される「被収容者」、留置施設に留置される「被留置者」、海上保安施設に留置される「海上保安被留置者」の人権を尊重しつつ、これらの者の収容に応じた適切な処遇を行うことを目的としている(同法1条・2条)。

[石川正興]

法の内容

本法による改正点は多岐にわたる。

 第一は、行刑運営の透明性の確保である。すなわち、民間人からなる刑事施設視察委員会が新たに刑事施設に導入された。

 第二は、被収容者の権利義務・職員の権限の明確化である。具体的には、(1)宗教上の行為、書籍や新聞などの閲覧の権利保障と制限要件の明確化、(2)規律秩序の維持のための措置(身体検査、手錠等の使用、隔離・保護室収容)の要件の明確化、(3)懲罰の要件の明確化と科罰手続の整備(事前告知・弁解の機会の付与)などである。

 第三は、受刑者の社会復帰に向けた処遇の充実である。(1)矯正処遇として作業のほか、改善指導・教科指導の明記、(2)処遇要領に基づく計画的な処遇の個別化、専門的知識の活用、(3)制限の緩和、優遇措置の導入、(4)外部通勤作業や外出・外泊の制度の導入などがそれである。

 第四は、被収容者の生活水準の保障である。(1)衣類・食事などの給貸与、自弁物品の使用の範囲・要件が明確化され、(2)適切な保健衛生上・医療上の措置が明記された。

 第五は、外部交通の保障・拡充である。(1)面会・信書の制限要件が明確化され、さらに(2)受刑者に対して、電話による通信も一部許容されることになった。

 第六は、不服申立制度の整備である。(1)刑事施設の長による一定の措置について「審査の申請の制度」、(2)職員の暴行などについて「事実の申告の制度」、(3)刑事施設の職員による処遇全般について「苦情の申出の制度」などが新たに創設されることになった。

 なお、同法では、表記の平易化(口語・現代語化)が行われ、長い間「監獄」という名称でよばれてきた施設が「刑事施設」と改称されたほか、たとえば「収監」は「収容」、「在監者」は「被収容者」、「監房」は「居室」、「監獄官吏」は「刑務官」、「仮出獄」は「仮釈放」へと用語がそれぞれ改められた。

[石川正興]

『藤本哲也著『刑事政策概論』全訂第6版(2008・青林書院)』『鴨下守孝編著『新行刑法要論』全訂2版(2009・東京法令出版)』『法務省矯正研修所編『成人矯正法』(2009・財団法人矯正協会)』

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