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伝統論争 でんとうろんそう controversy concerning tradition

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知恵蔵2015の解説

伝統論争

1950年代の建築ジャーナリズムを賑わせた論争。『新建築』1955年1月号における丹下健三と川添登の対談がきっかけとなって開始され、その後白井晟一(せいいち)らも関与する。この対談の中で、丹下は建築と伝統の関係について、(1)伝統の形を第一に踏まえて伝えていく方法、(2)形態ではなく精神的なものを受け継いでいく方法、の2つの選択肢を示し、自らは(1)の手法に拠るという立場を表明した。丹下は、その一方で日本の伝統の原型を縄文と弥生の2つのタイプに区別し、「もののあわれ」や「風流」などの系譜に連なる後者の洗練を批判し、竪穴式住居伊勢神宮、民家などに象徴される前者のより原始的でディオニュソス的な力を称揚する、岡本太郎の縄文論とも通底する立場からの議論を展開した。この論争の中で絶えず中心に位置していた丹下は、その後広島ピースセンター(55年)や香川県庁舎(58年)において伝統的な美意識と西欧モダニズム建築の融合という形で手腕を発揮し、さらには東京オリンピックや大阪万国博覧会のような国家的プロジェクトや、メタボリズムのような建築デザイン運動にも大きな影響を及ぼしていった。

(暮沢剛巳 建築評論家 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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