日本大百科全書(ニッポニカ) 「低周波療法」の意味・わかりやすい解説
低周波療法
ていしゅうはりょうほう
低周波電流を利用した治療法で、周波数毎秒1万サイクル以下の交流あるいは同程度の断続平流を用いるが、普通は後者すなわち平流治療を意味することが多い。なお、回路を流れる電流がつねに一定の方向と大きさをもつ直流のことを、医療上、平流とよんでいる。
平流治療は、おもに神経や血管障害の治療に用いられる電気治療の一種である。平流には陽極(プラス)と陰極(マイナス)の区別があって、一般に陰極は興奮性を高めて刺激的に作用し、陽極は逆に興奮性を低下させて鎮静的に作用するといわれるが、20分間以上通電すると陽極刺激が興奮的に、陰極刺激が鎮静的に作用するという。しかし、臨床的にはあまり影響がないので、極性にはこだわらない。
持続平流療法は、ある神経支配領域に異常が認められるときに利用される。運動神経に対しては陰極刺激で筋緊張を亢進(こうしん)させて興奮性を増し、血管を拡張させる作用があるので、弛緩麻痺(しかんまひ)やレイノー病、間欠性跛行(はこう)などの血管障害に用いられる。知覚神経に対してはおもに鎮静的に作用し、神経痛や神経炎などの痛みの鎮静に用いられる。通常、10~50ボルト、1~5ミリアンペアで15~20分の通電から始めて漸次増量し、30~40分までとする。広範囲を刺激する場合には、皮膚表面に置く電極を大きくするか、回転導子を用いて皮膚上を転がして通電する。陽極刺激が神経痛をはじめ、痙(けい)性麻痺や振戦麻痺のほか、血管拡張や血流増加などに用いられる。また、変性がかなり高度で通電による興奮性が低下している場合には、断続平流療法が行われる。これは、筋および神経に対する刺激作用が、電流の流し始めと中止したときにおこることを利用したものである。脊髄(せきずい)前角炎や筋萎縮(いしゅく)症など筋の弛緩性麻痺に用いる。
なお、平流治療の応用として低周波治療器を用いる電気刺激療法では、イオン導入法や電気四槽浴なども行われる。
[小嶋碩夫]