日本大百科全書(ニッポニカ) 「電気刺激療法」の意味・わかりやすい解説
電気刺激療法
でんきしげきりょうほう
電気的刺激によって行う療法をいうが、ここでは、外部から電気的エネルギーを生体に加えて、神経や筋に興奮をおこさせ、治療目的を達するいわゆる低周波療法を中心に述べる。電気刺激の条件には三つあり、一つは電流の強さ、二つは立ち上がりの角度、三つは通電期間とそれに関連した休止期である。波形はいろいろのものが用いられるが、多くは矩形(くけい)波またはパルス波で、出力可能な周波数は1ヘルツ以下から1000ヘルツ、ときには数千ヘルツまでであるが、主として用いられるのは50ヘルツ以下で、多くてもせいぜい200ヘルツくらいである。神経障害の場合などでは、経皮的にこれらの電流刺激を加えることによって、麻痺(まひ)した神経や筋を興奮させて他動的に麻痺筋を動かすことができる。しかし、変性をおこしている神経を刺激して、その支配筋を動かすためには、長い通電期間をもった波形の電流が必要である。一般に自動運動のできない麻痺筋を他動的に動かしてやるのがこの療法の目的である。心臓の刺激伝導系に異常があって生命に危険のある場合、直接、心筋を電気的に動かす「心臓ペースメーカー」という装置や、心房細動などのある場合、電気刺激を加えて蘇生(そせい)させる「除細動」という装置はこの療法の応用である。最近はこうした電気的興奮の目的だけでなく、鎮痛や麻酔の目的にも応用されるようになり、この際は体内に挿入した鍼(はり)を介して通電することが多い。
[玉川鐵雄]