低潮線保全法(読み)ていちょうせんほぜんほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「低潮線保全法」の意味・わかりやすい解説

低潮線保全法
ていちょうせんほぜんほう

日本の排他的経済水域権益を守るため、遠隔地にある離島や大陸棚保全を図り、漁業海洋資源などの利用促進を定めた法律。2010年(平成22)5月、衆参両院を全会一致で通過、成立し、同年6月に施行された。正式名称は「排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律」(平成22年法律第41号)。排他的経済水域は、もっとも潮が引いたときの海岸線(低潮線)が基準となり、この保全が重要であるため、同法は「低潮線保全法」と略してよばれる。「沖ノ鳥島保全法」とよばれることもある。同法に基づき、政府は2010年7月に「低潮線保全基本計画」を閣議決定した。沖ノ鳥島(日本最南端)と南鳥島(同最東端)を「特定離島」に指定し、政府が護岸工事や港湾施設の整備・管理をして自然侵食などによる水没を防止する。特定離島の周辺水域を占用しようとする者は国土交通大臣による許可を必要とし、周辺水域での船舶廃棄や放置を禁じた。特定離島を保全するためのサンゴ増殖技術の開発と確立、特定離島周辺での持続的漁業の推進、海洋鉱物資源の開発、生態系や地殻変動観測などの目標に取り組むことも盛り込まれた。

 低潮線保全法はまた、沖ノ鳥島と南鳥島以外の離島などを低潮線保全区域に指定することができ、同区域内の海底掘削などを行う場合には国土交通大臣の許可を必要とすると規定した。これに違反して区域内で人為的に損壊を行った者には1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科され、国土交通大臣は掘削等の行為の中止、原状回復などを命ずることができると定めた。排他的経済水域の基点となる離島は全国に99か所あるが、このうち49島には名称がなかった。政府は名称を決めると同時に、人為的破壊や自然侵食から守るため、護岸工事などの侵食防止措置を講じていく計画である。99の離島以外にも、日本の領海の基点となる小島が多数存在しているが、こうした小島の数や名称の有無などの把握が進んでいないのが実態である。

 なお、中国政府は沖ノ鳥島を島ではなく岩であり、排他的経済水域の基点ではないと主張している。日本政府が低潮線保全法を制定したのは、沖ノ鳥島が島であることを広く内外に示すねらいもある。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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