躰術、胎術とも書く。(1)柔術の別称、または同意語として混用されているが、近世柔術の諸流派のうち、とくに戦場組討(くみうち)の基礎技術、小具足(こぐそく)や匿(かくし)武器の使用、体力(大力(たいりき)、強力(ごうりき))の錬成、打拳(だけん)・指頭(しとう)術・骨法(こっぽう)・強法(ごうほう)・動体合体(どうたいがったい)の気術(きじゅつ)などを含み、練体術(れんたいじゅつ)の色彩が強い流儀に「体術」を称するものがある。その分布上から、犬上(いぬがみ)流、玉心(ぎょくしん)流、神道殺活流、一覚(いっかく)流、高木(たかぎ)流、無関(むかん)流、日上新当(ひのかみしんとう)流、日上直明流、九鬼神流、把心(はしん)流、方円(ほうえん)流、洗心流、岡本流など、西国とくに中国・九州の諸藩に多いのが特徴的である。
江戸中期以来、柔(やわら)(和)が「強剛の敵に強く仕懸(しかけ)られし時、其(その)力をかりて投返し、はね返し、後(ご)の勝(かち)を第一とする」風潮に対し、識者のなかから、「体術の肝要は砲を以(もっ)て臼(うす)を砕くが如(ごと)く、本朝相撲(すもう)修業の如(ごと)く勝つ事を学び、而(しか)る后(のち)止む事なき時に後(ご)の勝を求るにあらざれば、柔術の実意にこれ無し」(『尾府武芸はしり廻』)という、厳しい批判が出ていた。
(2)体操のこと。明治初年ごろ、体操という用語が一般に確定するまで、しばらくの間、西洋式体操術の意味に用いられていた。1868年(明治1)刊の田辺良輔(りょうすけ)の『新兵体術』をはじめ、翌年刊の内田正雄の『和蘭学制』の小学教科のうちに、ギムナスチーキ=体術と訳出されている。1878年(明治11)、文部省が体操伝習所を設置するとともに、体操(徒手体操、器械体操など)に統一された。
[渡邉一郎]
…技術を段階的に教授できるように組織だてが行われ,おのおのが流派を名のるようになった。それらは,組討,鎧(よろい)組討,小具足(こぐそく),捕手(とりて),捕縛,腰の廻り,やわら,体術,和術,柔術,白打(はくだ),拳法などと呼ばれたが,これらの無手あるいは短い武器をもって攻撃・防御する術を総称して,一般に柔術またはやわらと称した。 柔術は武士階級における武道の一つとして修練が積まれ,多くの名人や達人が輩出した。…
…いまや体育は身体および精神を,人間存在の諸相に即応させつつ育成し,健康を保持増強して,生の高揚をはかる営みということができる。【水野 忠文】
[日本]
日本の学校教育で体育に関する教科が設けられたのは,1872年(明治5)〈学制〉が発布され,小学校の教科として〈体術〉という教科が〈養生法〉とともに定められたことに始まる。〈体術〉はその翌年に〈体操〉と改められたが,その中心教材は体操であった。…
※「体術」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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