便が不随意に排出する状態。日本で便失禁症状をもつ人はおよそ500万人と推計されている。加齢による肛門(こうもん)括約筋の働きの衰えや、脊髄(せきずい)の下端部にある仙髄の損傷により、排便を制御する仙骨神経が障害されることなどが原因である。症状から、便意を我慢できずに漏れる切迫性便失禁、切迫性はなく気づかないうちに少しずつ漏れ出る漏出性便失禁、その両方の混合性便失禁に大別される。原因別には、咳(せき)をしたときなどに漏れる腹圧性便失禁、便がたまっているのに便意を感じず、いつの間にかあふれ出る溢流(いつりゅう)性便失禁、認知症や運動障害などでトイレにまにあわない、あるいは排便動作がうまくいかないなどが原因で漏れる機能性便失禁などがある。
従来は、個別の排便習慣をとらえて時間ごとに排便を促す、括約筋の収縮訓練や修復を行う、薬物によってコントロールするなどの治療やケアが主流であったが、近年になって排便を制御する仙骨神経を電気的に刺激して症状を改善する機器(仙骨神経刺激装置)が開発された。機器を臀部(でんぶ)の皮膚の下に埋め込み、継続的に神経を刺激することで排便を調節するこの方法は、仙骨神経刺激療法(SNS:sacral nerve stimulation)とよばれ、2014年(平成26)から健康保険の適用となり慢性便失禁の治療の幅が広がった。
[編集部]
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