(読み)しぬび

精選版 日本国語大辞典 「偲」の意味・読み・例文・類語

しぬび【偲】

  1. 〘 名詞 〙 ( 上代は「しぬひ」 )
  2. (イ) ( 動詞「しぬぶ(偲)(イ)」の連用形名詞化 ) ひそかに思い慕うこと。
    1. [初出の実例]「わが妹子が志濃比(シヌヒ)にせよと着けし紐糸になるとも我(わ)は解かじとよ」(出典万葉集(8C後)二〇・四四〇五)
  3. (ロ) ( 動詞「しぬぶ(偲)(ロ)」の連用形の名詞化 )
  4. (イ) に同じ。

しのび【偲】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「しのぶ(偲)」の連用形の名詞化。古くは「しのひ」 ) 過去のことや離れている人のことなどを思い慕うこと。また、それを思い出す材料
    1. [初出の実例]「葦の屋の 菟原処女(うなひをとめ)の 奥津城(おくつき)を わが立ち見れば 永き世の 語りにしつつ 後人の 偲(しのひ)にせむと」(出典:万葉集(8C後)九・一八〇一)

しのばし【偲】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 ( 動詞「しのぶ(偲)」の形容詞化 ) したわしい。恋しい。忘れがたい。
    1. [初出の実例]「政事うるはしく、しのばしかりければ、このなしの木きることなかれ」(出典:今鏡(1170)一)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「偲」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 11画

[字音] シ・サイ
[字訓] つよい・かしこい・しのぶ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は思(し)。〔説文八上に「彊力なり」とし、思声。「詩に曰く、其の人美にして且つ偲(さい)なり」の句を引く。〔詩〕は〔斉風、盧令〕。二章の「其の人美にして且つ(けん)なり(髪長の人)」に対応する句で、偲は鬚がこくて美しいさまであろう。

[訓義]
1. つよい。
2. かしこい。
3. ひげが多い。
4. 国語で「しのぶ」とよむ。

[古辞書の訓]
名義抄〕偲 ヲヲ(シ)・シタフ

[熟語]
偲偲

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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