家庭医学館 「先天性水腎症」の解説
せんてんせいすいじんしょう【先天性水腎症 Congenital Hydronephrosis】
水腎症とは、尿の流れるどこかが閉塞(へいそく)したり(つまったり)、狭窄(きょうさく)(狭くなったり)したために、腎盂(じんう)に尿がたまって、その部分が広がってしまう病気です。
腎盂と尿管の移行部が狭窄する場合がもっとも多くなっています。
もし、この狭窄が下の尿管と膀胱(ぼうこう)の移行部におこると、上流の尿管も広がってきます。このような場合を水腎水尿管症(すいじんすいにょうかんしょう)と呼びます。
こうした異常が左右どちらかの腎尿路にあれば一側性の水腎症に、また、両方の腎尿路にあったり、膀胱からの出口より下にあれば両側性の水腎症になります。
一般に子どもの水腎症は先天的ですが、遺伝性はありません。
[症状]
くり返す尿路感染症や腹部腫瘤(ふくぶしゅりゅう)として発見されることが多いのですが、最近では、学校健診時の検尿で膿尿(のうにょう)(白血球尿(はっけっきゅうにょう))が出ることで見つかることもあります。
急性の水腎症では、腹痛や腰痛を訴え、肉眼的血尿(けつにょう)(目で見てわかる血尿)が出ることがあります。
最近では、妊娠中の胎児(たいじ)超音波検査によって、出生前に診断されるケースが増えています。
[検査と診断]
超音波検査や腎盂造影で容易に診断ができます。腎盂や尿管の広がりが片側か両側か、また、尿管がどの高さから広がっているかをより正確に診断するために、アイソトープを用いた検査を行なうこともあります。
狭窄によって尿がたまるだけでなく、逆流によることもあるため、排尿時膀胱尿道造影(はいにょうじぼうこうにょうどうぞうえい)を行なうこともあります。
[治療]
水腎症の程度の軽いものは、感染を防ぎながら経過をみていくうちに、自然に治るものも少なくありません。
手術をすべきかどうかは、水腎症の程度と画像検査の所見によって決定します。アイソトープを用いたDTPA利尿レノシンチグラムで、アイソトープの排泄遅延(はいせつちえん)の程度を正確に判断してから、手術の適応を決めることが多いものです。
尿路感染症を何度もくり返したり、高度の水腎症の場合には、腎実質が障害され、腎機能低下をきたすことがあるので、早期に手術をします。